進化する不動産業-リアル社会とデジタル空間のインフラを一緒に提供する

 2022年2月、三井不動産は柏の葉内の国立がん研究センター東病院の隣に、先端研究の開発が可能な「三井リンクラボ柏の葉1」をオープンさせた。7月には同病院の敷地内に、病院連携宿泊施設「三井ガーデンホテル柏の葉パークサイド」の開業を予定。この地では、同社と同がんセンターなどをはじめとした公・民・学の連携、ライフサイエンス産業のプレイヤーらが集積する「ライフサイエンス拠点」形成の取り組みが進められている。

 「柏の葉にはトップクラスのアカデミアが集結していますが、研究者は自分の研究を学問のみで終わらせるのではなく、社会実装させることを目指して日々研究に励まれています。社会実装のための一つの方法として、アカデミアと企業の連携が考えられますが、弊社はリアル・デジタルの双方で場所を提供し、連携に必要なコミュニケーションの場・機会を設けることで、技術発展・実装に貢献していきたいと考えています」(吉崎氏)

 ホテル・ラボでは建物性能・顧客サービスという従前からある機能だけでなく、デジタルインフラを併用することで、企業・アカデミアの連携を支援していく。

 「単に研究機関・病院の近くに建物を建てるだけでは、もはや弊社の仕事としては完結しません。リアル社会のインフラとデジタル空間を併せて提供し、いかにサービス価値を高めていくかが大切です。これが不動産業の進化形だと考えています」(吉崎氏)

 三井ガーデンホテル柏の葉パークサイドでは、病院と連携した24時間体制の支援サービスや、センシングデバイスの貸与およびこれを用いた患者への体調管理サービス、患者の状態に適した食事を提案する食事管理サービス等が利用可能だ。また、膀胱がんなどにより消化管や尿管が損なわれたことから、腹部に排泄のための開口部を造設しているオストメイト(人工肛門・人工膀胱保有者)患者向けのトイレも設置されている。

 「国内外からがん治療に訪れる患者様や、退院後も経過観察を必要とする患者様、ご家族などが利用されることを想定しています。こうした患者様へのご対応を含め、三井ガーデンホテル柏の葉パークサイドは患者様のニーズに応えたサポート機能を担うことが期待されているのです」(吉崎氏)

 さらにこの地では、今後医療機器の研究・開発、最先端医療の創出なども検討されているという。

柏の葉におけるアカデミアとの連携と国立がん研究センター東病院を中心としたライフサイエンス拠点化(図表提供:三井不動産株式会社)
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