しかし、先ごろ欧州連合(EU)で合意された巨大IT(情報技術)企業規制「デジタル市場法(DMA)」が施行されれば、アップルや米グーグルはそれぞれのアプリストアの課金プラットフォームを外部に開放する必要があると、ロイターは報じている。
DMAでは、時価総額が750億ユーロ(約10兆1000億円)以上か、EU域内の年間売上高が75億ユーロ(約1兆100億円)以上の巨大企業を「ゲートキーパー(門番)」に指定し、巨大プラットフォーマーの市場支配力に制限をかける。
アップルとグーグルとは、アプリストア内で有料アプリに対し自社の決済システムを利用するよう義務付けており、アプリ開発者から課金手数料を徴収している。DMAではこうした強制的な措置を禁止する。また、アプリを正規ストア以外からインストールする「サイドローディング」を容認するよう命じる可能性もある。
EU加盟国との協議を主導するアンドレアス・シュワブ欧州議会議員は「DMAは立証責任を規制当局から企業に移す点が大きな特徴だ」と指摘する。これまでは、企業の競争法違反を当局側が立証する必要があった。DMA施行後は、企業側が自らの行動の公正性を証明することになるという(米ウォール・ストリート・ジャーナルの記事)。
デジタルサービス法、4月にも合意へ
欧州委は20年12月、DMAとともに「デジタルサービス法(DSA)」も公表した。このDSAでは、違法コンテンツや偽情報、違法商品・サービスの速やかな削除などを義務付けるほか、利用者ごとに異なるオンライン広告について、その表示基準の開示も求めるとみられる。
欧州委員会で競争政策を担当するマルグレーテ・ベステアー執行副委員長はDMAについて、22年10月に施行されるとの見通しを示している。また、ロイターによるとDSAについて同氏は、EU加盟国と欧州議会が22年4月にも合意に達する可能性があると述べている。
DMAでは違反企業に対し、世界年間売上高の最大10%の罰金を科す可能性があり、違反が繰り返される場合は上限が20%に引き上げられる。DSAでは世界年間売上高の最大6%の罰金を科すという。
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