一筋縄ではいかないゲーム業界独自の事情とは?

 ゲーム開発が大規模化すれば、当然ながらリスクも高まる。開発をスタートするときも、事前にプロジェクトの成否を厳密に見極めなければならない。最初の段階でコンセプト、企画、仕様、スケジュールを固めて、計画を立てて、遂行していく。こうした手順を踏むのはプロジェクトマネジメントの要諦からすれば当然のことだが、そこにゲーム、ひいてはエンターテインメント業界ならではの一筋縄ではいかない事情が絡んでくる。

「一般的なシステム開発等では、例えば銀行ATMのシステムのように、プログラムのエラーがなく、きれいに動くことが最優先となります。しかし、ゲームコンテンツの場合、われわれがお客さまに提供しなければいけない一番の価値は『きれいに動くこと』ではなく『ゲームが面白いかどうか』なのです。ただ、当初想定を元にプログラムを組んでみても、実際にテストしてみると面白くない場合もあります。いわゆる仕様変更とそれ伴うスケジュール変更が起こり得る可能性が高く、極端な場合、最初からやり直しとなることもあり得るのです。面白さについて試行錯誤するからこそ良いものができるのですが、だからこそ、プロジェクトをコントロールしにくくなるというジレンマがあるのです」(小俣氏)

 現場の陣頭指揮を執るプロジェクトマネジメント課チーフの宋駿氏も言う。

「ゲーム開発では一度、要件定義を固めても、コンテンツが面白いか面白くないかで何度も変更を余儀なくされます。基本的なプロジェクトマネジメントのステップを踏むことは変わらないのですが、ゲーム開発の場合、その一連のステップを何度も繰り返す、変更に次ぐ変更が当たり前のようになっているのです。そのため、業界では最初から遅延リスクを織り込んでスケジュールにバッファーを持たせていることも多いです」