多くの企業ではDXをはじめとした新規プロジェクトが推進されているが、プロジェクトマネジメントがうまく機能していないために、プロジェクトの成功率が低くなるケースが少なくない。そこでプロジェクトをうまく推進させるために必要となっているのがPMO(プロジェクトマネジメントオフィス)だ。PMOはプロジェクトマネージャー(PM)をサポートする役割を担うが、とはいえ導入当初からうまく機能するわけでもない。そこには社内風土に見合った独自の工夫も必要だ。今、PMが不足している中で、新規プロジェクトを多数抱える企業はどのような手を打てばいいのか。今回はゲーム業界大手のバンダイナムコエンターテインメントの事例から、課題を解決するヒントを探っていこう。

ゲーム開発の大規模化でPMOの重要性が高まる

 バンダイナムコホールディングスの主要グループ企業であるバンダイナムコエンターテインメントが今、ゲーム開発の環境変化への対応に注力している。同社はグループ内でゲームを中心としたデジタル分野のエンターテインメントコンテンツを主力とし、スマホアプリ向け、家庭用ゲーム機向けで多くの開発プロジェクトを進行させている。

 そんな同社では2020年から新たにビジネス戦略室プロダクト戦略部を設置。その中でも注目すべきなのが、PMOの役割を果たしているプロジェクトマネジメント課の存在だ。

 実はゲーム業界では今、PMOの重要性が増している。その大きな要因が、ゲーム開発の大規模化にある。大規模化に伴い、開発スケジュールが長期化。開発するプロジェクトメンバーは多大な人数に及び、開発費も高騰するようになった。しかもアプリをはじめ、オンライン運営型のコンテンツが増え、ビジネスモデルも多様化する変化も組み合わさり、ゲーム開発のプロジェクトマネジメントの難度が急上昇しているのだ。

 いわば、デジタル化の進展によるゲーム開発の環境変化にいち早く対応するためにPMOを設置する必要があったのである。ビジネス戦略室プロダクト戦略部プロジェクトマネジメント課マネージャーの小俣潤氏が次のように語る。

「スマホアプリが台頭し始めた当初は、数十人、数千万円の予算で1年もかからずにゲームのリリースができる規模感だったのですが、現在では数百人の人員が必要になり、予算は場合によっては数十億円にまで膨れ上がり、リリースにも数年単位でかかるようになっています。ゲームアプリが浸透して10年くらいたちますが、ここ2~3年前から開発環境の変化が急激に進むようになったのです」