パソナグループは『日経ウーマン』や『フォーブス』をはじめ、マスコミが発表する女性活躍ランキングの上位常連企業。もちろん、厚生労働省の「えるぼし」(女性活用)、「くるみん」(男女の育児休暇の活用)の認定も受けている。実際、同社の役員に占める女性の割合は31.4%、管理職に占める割合は51.5%、女性社員の出産後の復職率は100%に達している。
このような女性社員の活躍の裏には、さまざまなインフラの存在がある。そうしたインフラの幾つかは女性以外も活用でき、そこから新たなインフラが誕生することもある。このような積み重ねによって障害者、高齢者、グローバル社員などの活躍の場が広がっていった。パソナグループでは、どのようにインフラを整えてきたのか、常務執行役員HR本部長の金澤真理さんに聞いた。
企業理念は「社会の問題点を解決する」
「パソナグループのスタートは、『もう一度働きたい』と考える女性の支援でした」と話すのは、パソナグループ常務執行役員 HR本部長の金澤真理さん。パソナグループが創立されたのは1976年。当時の女性は 、結婚したら会社を辞めるのは当たり前だった。まして一度会社を辞めた女性が、再び働くことは、どんなに優秀であっても難しかった。
こうした時代に、派遣というスタイルで、子育てを終えた主婦の働く場を作ることでパソナグループは成長してきた。もちろん、パソナグループ内でも、女性を積極的に活用してきた。家庭を持つ女性が、より働きやすいように「時間限定」「エリア限定」「再雇用制度」など、多様な働き方を提案してきた。
「だから、女性を支援する会社というイメージが強いのですが、たまたま女性の支援からスタートしただけで、そもそも目指したのは『誰もが自由に好きな仕事を選択できる社会』。企業理念は『社会の問題点を解決すること』です」(金澤さん)
実際、支援する対象は、女性からシニア、障害者、ひとり親、グローバル社員など、働く上で何らかの困難を抱えるさまざまな人に広がっていった。
例えば、シニア(65歳以上)。同社はシニアを対象とした採用(エルダーシャイン制度)もしており、入社式までやっている。入社後は、それまでのキャリアや本人の希望を生かせる部署に配属される。また、コンプライアンスや情報セキュリティから健康や介護、老後への導入準備まで、至れり尽くせりのさまざまな研修がある。さらに、年金手続き、確定申告、資産相続など税金関係、加入保険の見直し等の相談できる専用窓口もある。同期会も定期的に開催される。同期会には、シニアが働くためには「こんな人事制度が欲しい」「こんな福利厚生制度が欲しい」といった提案を期待しているという。
障害者については、個性に合わせたさまざまな仕事を用意している。ファイリングや契約書作成、経理や総務の受託作業、無農薬の野菜やコメ作り、無添加のパン製造といった具合だ。描画に個性を発揮する障害がある社員を集めた部門もあり、販売用に絵やグッズの制作をしている。ちなみに、同社のオフィスの一つにおけるエレベーター扉のアートは、全て障害があるアーティスト社員たちが手掛けている。
一方、同社は淡路島において、現在、レストラン、テーマパークをはじめとした文化事業、教育事業、農業支援、さらに、ヘルスケアのコンサルタント事業、環境保全など、ありとあらゆる分野に進出している。地域の衰退という「社会の問題点を解決する」ために新しい市場をつくれば、新しい雇用の場が生まれ、仕事の選択の幅が広がり、より自分の好みにあった仕事ができるし、支援のメニューが手厚くなる。
実際、「自然豊かな環境で安心して子育てでき、キャリアのチャンレンジを目指すシングルマザー」「音楽家として夢の実現に向けて活動しながらスキルを身に付けながらハイブリッドキャリアを目指す」など自分らしく生きるために、淡路島に移住してくる社員や転職者は増加の一途をたどっている。
「実は私も一昨年から5歳の子供を連れて東京都と淡路島の両方で仕事を行っています」(金澤さん)
淡路島のオフィス内には保育園があり、親子で出社が当たり前。いつでも子供に会えるし、仕事が立て込んでいれば、その間、きちんと面倒をみてくれる。語学やさまざまなスポーツ、芸術など子供の教育コンテンツも充実しているので預けることに不安はない。子育てと仕事の両立がしやすいのだという。