メタバースとブロックチェーン、NFT
「メタバース」や「Web3」を巡っては、さまざまな可能性や論点が指摘されています。それらに詳細には立ち入りませんが、これらの用語が登場した大きな背景として、“NFT (Non-Fungible Token)”という、ブロックチェーン・分散台帳技術の新たな用途の発見を挙げるべきでしょう。
2009年に、最初の暗号資産(仮想通貨)であるビットコインと共に登場したブロックチェーン・分散台帳技術は、中央集権的な帳簿管理者を置かずに権利の連続を証明することができる技術です。そして、「権利の連続」としてまず思いつくのは、人から人へと転々流通する「お金」です。したがって、まず「お金」類似のものにこの技術を使えないかとの考えから、暗号資産への応用が最初に試みられたのも自然といえます。
ビットコインなどの暗号資産は、「代替性トークン」(Fungible Token)」ともいえます。「トークン」と言えば、かつてニューヨークなど海外の地下鉄で切符として使われていたコインのようなものが有名ですが、何かを表象するものを広く指す用語です。また、円やドルなどの通貨は、誰が持っていても同じものなので、もちろん「代替性」があります。そして、Aさんが持っているビットコインとBさんが持っているビットコインは取り換えても同じなので、やはり「代替性」があるといえます。
これに対し、NFTは「非代替性トークン」、すなわち、それぞれに個別性があり取り換えのできないトークンです。例えば、Aさんの履いているスニーカーとBさんの履いているスニーカーの柄が違っていれば取り換えが効かないわけです。このため、NFTを使えばバーチャル空間の中に「この登場人物しか持っていない、世界唯一のスニーカー」などを作り出すことができます。
メタバースでのNFTの応用
NFTは、ブロックチェーン・分散台帳技術の新たな応用の可能性を開くものとして期待を集めています。
ブロックチェーン・分散台帳技術は、技術として高い応用可能性が期待されてきましたが、ビジネスを通じた収益化が大きく進んだとは言えません。暗号資産は支払決済の手段としてはほとんど使われませんでしたし、既存の金融資産の分野では、証券のブックエントリーシステムなど中央集権型のインフラが既に発達しており、ブロックチェーン・分散台帳技術が参入する余地が限られたからです。
この点、NFTは、暗号資産でも既存の金融資産でもない、新たな資産や権利にブロックチェーン・分散台帳を応用できる可能性を拡げています。例えば、米国バスケットボール協会(NBA)の“NBA Top Shot”は、選手のハイライトシーンの動画を、複製のできない部数限定の資産として取引することを可能としています。