スペースX社(テスラの創始者イーロン・マスクが設立)やブルーオリジン社(Amazonの創始者ジェフ・ベゾスが設立)の台頭を見れば大方の予想がつくように、従来NASAが担っていた宇宙探査や国際宇宙ステーション(ISS)への物資輸送の国家的プロジェクトが民間企業にアウトソースされることによって、大きな事業機会が生まれつつあるのだ。

ドリーム・チャイサー・スペースプレーンはスペースシャトルの3分の1ほどのコンパクトな輸送船だ(筆者撮影)

 最後に、主役級の企業がいなかったおかげで、ふだんはCESの脇役的存在の企業の動向がわかりやすくなったという副次的効果についても触れておこう。

 ひとつは8K/4Kの大画面テレビやデジタル家電をめぐる韓国勢(サムスン電子、LGエレクロトニクス)と中国勢(ハイアール、TCLなど)との主に中国市場をめぐる主導権争いだ。最近のサムスンの業績が高い水準で保たれているのは実は半導体事業のおかげであり、本業である大画面テレビやデジタル家電では中国勢の猛追を受けて苦戦が始まって久しい。その結果、ボリュームゾーンの商品は同じ機能をより安い価格で提供する中国勢に軍配が上がり、押し出された韓国勢はお客さまニーズを深掘りし過ぎて「イノベーションのジレンマ」に陥っている・・・いわば数年前に日本企業と韓国企業の間で起きていた競争の構造が、今度はより強力なブーメランになってサムスン電子やLGエレクトロニクスに降りかかってきている状況が透けて見える。

TCLの洗練されたデジタル家電(上)とサムスン電子が発表した円筒形のスピーカー付き液晶プロジェクター・Freestyle(下)。家電の領域で韓国企業は「イノベーションのジレンマ」に陥りつつある(筆者撮影)

 またもうひとつは自動車の領域で起きている。自動運転技術やEV化が表舞台の技術だとすれば、充電インフラの技術は黒子の技術である。しかし今回、皮肉ことに(韓国のヒュンダイグループを例外として)世界の大手のプレイヤーがCESの表舞台から姿を消したことで充電技術のプレイヤー企業にもスポットライトが当たり、存在感をアピールできるようになっていた。世界的にEVの普及が進む状況の中で、充電ステーションの設置や電源の確保は喫緊の課題であり、ここにもサステナブルな解決策が必要である。

会場の隅にある充電インフラ技術の企業のソリューションが実はEVの普及に欠かせないキーテクノロジーなのだ(筆者撮影)

「なりわい」革新の動機は「成長への野心」から「サステナビリティ」へ

 前回と今回の記事で、CES 2022の基調講演、記者会見、展示のハイライト部分を振り返ってレポートした。

 これまで多くのテック企業はCESという大舞台で抜け抜けと事業の「成長への野心」を語り、鮮やかな「なりわい」革新を行うことでその存在感を高め続けてきた。しかし、昨今、まさにこのコロナ禍に象徴されるように、企業が一時的にいくら儲かっても社会や環境が壊れてしまえば企業のビジネスの基盤も成り立たなくなってしまうことがはっきりしてきた。こうした流れを受けて、アボット、ゼネラルモーターズ、ジョンディア、キヤノン、ソニーのように「サステナビリティ」を企業活動の基軸に据える、バランス感覚の優れたプレイヤーが増えてくるに違いない。

 もし仮に、こういった課題意識がしっかり共有されたなら、CES 2022はその開催において歴史的な役割をしっかりと果たしたということが言えるだろう。

◎筆者からのお知らせ
 企業の「なりわい」革新については、拙著『「なりわい革新」事業×組織文化の変革で経営の旗印をつくる』(宣伝会議)をお読みいただければ幸いである。