キヤノンはキヤノンアメリカの小川一登社長兼CEOのが登壇した。冒頭でコロナ禍の社員やお客さまインサイトの変化を敏感に捉え、会社として「KYOSEI(共生)」という企業フィロソフィを打ち出したことが説明された。

 そしてキヤノンは「イメージングとイノベーションのエキスパート」として、コロナ禍でも人々のクリエイティビティとコラボレーションを高めることを今後のビジョンとして掲げ、課題解決のソリューションとしてKOKOMO(ココモ)、ALMOS(アルモス)という2つのソフトウエアプラットフォームを開発したことが示された。

 KOKOMOはキヤノンのカメラと新開発のデュアル魚眼レンズを使って撮影し加工した180度の臨場感溢れる3Dコンテンツを、モバイル端末と専用のヘッドセットを装着して楽しむものだ(キヤノンの展示ブースでOne to Oneで体験ができた)。

 一方、ALMOSは創造的なコラボレーションをする人たちがリモート環境で本当に必要としているものは何かを突き詰めた結果、生まれたものだという。クリエーターがカメラの動きに合わせるのではなく、カメラがクリエーターの意図を読み取ってズームやパンの機能でプレゼンをサポートしてくれるという優れものだ(2022年春以降、Microsoft TeamsでALMOSの技術が使えるようになるとのことである)。

キヤノンはコロナ下における社員やお客さまのインサイトの変化を読み取り、イメージングとイノベーションのプロとしてフィロソフィやビジョンを再定義した(出所:digital.ces.tech)

 ソニーの記者会見は1月3日に夕方5時からLVCCのソニー展示ブースで実施された。筆者はサムスン電子を優先したので、ソニーの記者会見は事後、ストリーミングで視聴した。

 LVCCのソニーブースで行われた会見は吉田憲一郎CEOが出席して行われ、「クリエイティビティとテクノロジーの力で世界を感動で満たす」というソニーグループのパーパスが紹介された後、今後、注目すべきソニーグループの活動やプロダクトの紹介が行われた。

 宇宙から見える地球の視点を提供するProject STAR SPHERE、新型コロナ対策と社会正義のための2つのファンドの設立、Sony Innovation Studioの活動、ハイクオリティの撮影に対応するドローン・AIRPEAK、2月に公開の映画『スパイダーマン』の新シリーズ、PS5シリーズの新しいヘッドセットPlayStation VR2・・・そして盛りだくさんの記者発表の最後の最後になって、ソニーの新しいEV、Vision-S2のお披露目と「ソニーモビリティINC」の立ち上げがサプライズ発表され、日本ではこの部分が話題として大きく取り上げられた。

ソニーはモビリティ事業の立ち上げを宣言した。安全とパーソナライゼーションは押さえつつ、エンタテインメント性に特徴を持ったソニーらしいEV開発に期待が集まる(出所:digital.ces.tech)

 一方でインテルとクアルコムの記者会見は、「WHY」や「HOW」の大切な部分でサステナビリティ戦略を打ち出した上記3社に比較すると、旧文脈のまんまという印象を受けた。

 直前でリアルからストリーミング方式に切り替えたインテル。45分という限られた時間の前半はクライアントコンピューティンググループGMでエグゼクティブVPのグレゴリー・ブライアンがリリースされたばかりの第12世代インテルコアSシリーズとHシリーズのPCエクスペリエンスをすさまじい早口で紹介し、後半はインテル傘下で自動運転技術の開発を進めるモービルアイCEOのアムノン・シャシュアが自動運転ソリューションでの先進性を強調する形になったが、いかんせん、あまりにも内容を詰め込み過ぎた。聴き手はファクトの羅列について行くのが精一杯で、ポジションの相対化に悩むインテルが狙う「モメンタム(勢い感)の回復」にはつながらなかったように思う。

 リアル開催では実は記者会見のトップバッターとなったクアルコム。クリスチアーノ・アモン社長兼CEOが自ら登壇、今後は「アンドロイド上のモバイル半導体」業から7倍の市場規模が見込める「Connecting Intelligent Edge」業へ「なりわい」の軸足を移すことを宣言した。具体的な打ち手としては、次世代アームPCの半導体開発支援、マイクロソフトのMeshプラットフォームでのMR事業、AT&Tと組んだ5Gによる新規格Wi-Fiの整備、ボルボやホンダと組む形でのEVのコックピットプラットフォーム・Snapdragon Digital Chassisの開発、そして2024年に向けた自動運転プラットフォーム・Snapdragon RideVision SoCなどを次々と紹介した。

クアルコムはモバイル半導体の設計に特化したファブレス企業だ。しかし「事業成長への野心」だけが経営戦略の基軸となるのは時代が求める価値観とズレているのではないか(出所:digital.ces.tech)