展示:キーワードは「グラウンドゼロ」と「ホットスポット」
続いて展示について見ていこう。
今回は数多くのCES常連企業が出展を見合わせた。お馴染みのグーグル、ヘルスケアのフィリップス、欧米や日本の自動運転関連企業(メルセデス、フォルクスワーゲン/アウディ、コンチネンタル、フォード、トヨタ、日産、ホンダ、三菱、エヌビディアなど)の姿がなかったことは残念だった。また、直前の昨年12月末になってT-モバイル、アマゾン、メタ(旧フェイスブック)、AT&T、ハイセンス、ウェイモはリアル(in-person)での活動をキャンセルしたとされる。
またパナソニックは展示スペースを2分の1に縮小した上で、ヒューマンリソースが必要になる製品展示は行わず、東京2020の開閉会式で活躍したプロジェクションマッピングを見せるのみとした(冒頭の写真)。
その結果、全ての展示会場で目立ったのが「グラウンドゼロ」(ブースの立っていない空き地)である。例えば韓国のLGエレクトロニクスはここ数年、LVCCのセントラルホールの入り口付近にサッカーコートの規模のブースとど派手な曲面OLED(有機ディスプレイ)の演出を行うことで有名だが、今年は企業ロゴと過去の展示内容の説明パネルが墓標のように立つ、視覚的には「喪失感」というタイトルの前衛芸術を思わせる展開となった。
対照的に従来のCESと遜色のない「ホットスポット」だったのが、起業して3年以内のスタートアップだけが出展を許されるユーレカパーク(サンズホテル会場1階)だ。今回は日本の出展を束ねているJETRO(日本貿易振興機構)も気合が入っていたと見えて、日本企業のコーナーはフランス、韓国、イスラエル、オランダ、台湾などのコーナーに負けず劣らず、存在感をアピールできていたように思う。
特に愛知県豊田市を拠点に空飛ぶクルマの技術開発を進めているスカイドライブは2020年に日本で初めて公開有人飛行試験を成功させた有人試験機SD-03をブースに持ち込んだこともあり、その集客効果は抜群だった。
またコロナ禍だからこそ、存在感が際立った企業もある。
基調講演にロバート・B・フォードCEOが初登壇して強いインパクトを残したヘルスケア企業のアボットは、展示ブースでも基調講演のストーリーに連動した、お客さまである患者への共感や理解をベースにしたブース展開を行なっており、基調講演と展示の相乗効果でインパクトと説得力のあるプレゼンテーションができていたように感じた。
また体験型の手漕ぎボート型のワークアウトマシンを製造販売するハイドロー(hydrow)はコロナ禍で在宅勤務が増える状況の中で着実に売上を増やしているようだ。サンズ会場2階のスポーツテックのコーナーでワークアウトマシンの体験を中心にした、唯一活気のあるブース展開を行っていた。
昨年10月のCES 2022予測記事でも紹介した、地元ネバダ州のスペーステック企業・シエラスペース(シエラネバダコーポレーション)。いつもの年ならグーグルが君臨するLVCC屋外のセントラルプラザにブースを構え、全長9メートルのドリーム・チャイサー・スペースプレーンのモックアップ(原寸大模型)を展示した。