ローカル5Gのユースケース創出に向けた動き

 日本では、総務省がローカル5G普及展開の旗振り役となり、「課題解決型ローカル5G等の実現に向けた開発実証」等の事業を推進しており、ユースケースの創出、実現に向けた課題検討等が進められている。実証採択数は、令和2年度は19、令和3年度は26に及び、製造(工場)、建設・土木、交通、スマートシティ、医療、観光、農業といったさまざまな分野が包含される。

 今回は紙幅の都合上、その中の3つではあるが、実証概要を紹介する。

・製造|製造現場における目視検査の自動化や遠隔からの品質確認に関するユースケース
 住友商事株式会社やサミットスチール株式会社等が、製造現場の効率化や安全性の向上を目的として実施したものである。
 具体的には、製品の目視による外観検査において、5Gの高速・大容量性等を生かし、8Kラインスキャンカメラで撮影した製品(稼働速度約100m/分で加工される鋼板の表裏面)等の高精細画像をAI解析し、傷の自動検知を行う実証と4Kビデオカメラで撮影した映像を用いて遠隔からの品質確認や判断・指示等の業務支援に関する実証を行っている。時間削減等の定量的な効果に加え、工場現場の身体的負担の軽減及び安全性向上等の定性的な効果に対しても現場からの好意的な意見が確認されている。

・製造|MR技術を活用した遠隔作業支援に関するユースケース
 トヨタ自動車株式会社等が、製造現場の効率化・省人化を目的として実施したものである。
 具体的には、MR技術を活用し、「生産設備(初号機)製作途中の不具合確認」と「生産設備製作時の配線作業遠隔支援」の2つのユースケースを実証しており、MRシステムとヘッドマウントディスプレイ(HMD)間における高精細・大容量の映像データ及びMR合成映像データの送受信、そしてそれを遅延なくやりとりするために、ローカル5Gの高速・大容量性、低遅延性が活用されている。現場作業者の安全性向上や作業効率化等の効果も確認されており、少子高齢社会における技能伝承の観点からも社会実装が期待される。

・交通|自動運転車両の安全確保支援の仕組みの構築に関するユースケース
 前橋市やICTまちづくり共通プラットフォーム推進機構等が、バス路線の「運行収支の悪化」やバス事業者の「運転手不足」といった課題に対応し、将来のバス路線の維持に向けて自動運転技術の導入を検討した取り組みである。
 ローカル5Gの高速・大容量、低遅延、多数同時接続といった特徴を生かし、自動運転車両に搭載したカメラ・センサー及び路側カメラ・センサー等で撮影した情報を用いた遠隔型自動運転の継続の可否の判断支援、遠隔監視センターからの自動運転車両の遠隔監視・操縦管制に関する実証を行っている。車両と遠隔管制室間、路側のカメラ・センサーと遠隔管制室間、車両と路側のカメラ・センサー間での情報伝送が実現できることが確認されており、社会実装が期待される。

 他も含めて実証概要を概観したところ、ユースケースにおいてローカル5Gに期待される活用方法としては、①高精細映像等のデータ取得・分析、②自動化、③遠隔監視・制御/コミュニケーション、④AR/VR/MR技術の活用のいずれか、またはそれらを組み合わせた形での実装が目指されていることが見えてきた。