商業的には大成功のIAC、自動運転業界から熱い期待が集まる

 まず商業的な側面から見ると、IACは認知度向上だけではなく、経済的にも大きな大成功を収めたイベントになった。IACに関連して自動運転関連のテック業界から集まった寄付金は何と1億2000万ドル(約136億円)を超えた。

 かつて、F1で開発された電子制御による燃費向上やアクティブセーフティなどの先進技術が、熟成の期間を経て実際のクルマづくりに応用されて、メーカーの競争優位につながったことは周知の通りである。そして、全く同じことが今、まさに自動運転の世界でも起きようとしている。

 IAC参加チームの多くは自動運転レーシングカーに使用したアルゴリズムの一部または全部を公開することを表明している。そのため、自動運転関連の企業にとって、このイベントにコミットすることは、(将来的な発展も含めてトータルで判断すれば)投資に見合った技術的フィードバックを得られることが期待されているのだ。

自動運転レーシングカーを自動運転技術の向上に役立てようとする試みは以前から存在した。CES 2018でエヌビディアのブースに展示された自動運転レーシングカーのプロトタイプ(著者撮影)

 さて、IACで各チームが使用した車両は、フォーミュラワン(F1)のレーシングカーより一回り小ぶりの「ダラーラ(Dallara)IL-15」である。1台の価格が23万ドル(約2600万円)もする本格的なレース専用マシンをベースに、自律走行の「認知」「判断」「制御」をサポートする各種のデバイス、具体的には米ルミナー(Luminar)社(注)のLiDARセンサーをはじめ、各種センサー、カメラ、GPSなどが搭載されている。

 IACが従来の自動車レースと違うのは、速さを競うためにレーシングカーを操るのが生身のレーサーではなく、自律走行のアルゴリズム(自動運転ソフトウエア)であるという点だ。

 今回は、30あった大学チームが約2年間をかけてアルゴリズムの開発に情熱を傾けてきたが、開発競争は熾烈である。開発の過程でチームの統合や淘汰の結果、最終的にエントリーできたチームは9チームにまで絞り込まれた。

(注)ルミナー(Luminar)社は2012年にスタンフォード大学生であったオースティン・ラッセルによって起業されたLiDARセンサー(光を用いたリモートセンシング技術)の草分け的存在。トヨタ、ボルボ、エヌビディアが同社の技術を採用したことで自動運転業界では注目を集めている。