方針管理・日常管理を早期に立て直すための処方箋
方針管理・日常管理を早期に立て直すには、設定している目標やテーマを、総合目標や部門目標、個人の目標のそれぞれで適正にすることが大切である。適正にするためには、達成可能で、かつ現地管理者の成長に資することを考える必要がある。設定された適正な目標に対してテーマを確実に実行することにより、関連するメンバーが成果感を得て成長につなげることができる。
多くの企業では上位から割り付けられた目標をそのまま部門の目標にしていることがあるが、これは目標管理という仕組みを使った「管理の放棄」である。設定した目標を確実に達成するために重要なのは、
・問題・課題の設定を具体的に行うこと
・併せて現状分析、施策検討力を強化すること
・目標達成に向けた具体的な行動を考え、その一連の行動を粘り強くフォローしていくことである。
ある企業の一つの取り組みとして、方針管理を題材にして現地管理者に個別指導を行いながら、目標の達成と人材育成の同時実現を目指して推進したことがあった。選抜された部門の現地管理者に対し、目標達成のためのテーマ推進を個別にフォローするのである。
スタートすると現地管理者が担当している目標やテーマへの理解が不足していることが判明した。言われた目標を繰り返して説明するだけで、テーマの進め方を全くイメージできていない人が多いことに驚いた。設定された目標やテーマの上位の目標はなにか、なぜそのテーマが大切なのか、なぜその目標値なのか、目標に対する現状の捉え方、達成への障害はなにか、その障害が発生している具体的な要因はなにか、など、まさにCAPDサイクル※として実行できるように進めた。
※CAPDサイクル:C(現状把握)から実施する改善サイクル。本例では現状分析を踏まえた施策検討を重点的に実施したため、おおむねこのサイクルで回した。
こうしたことを個別のテーマごとに具体的に議論・指導していきながら、検討や行動の過程を現地管理者とJMACコンサルタントがサポートし、現場で実践した。現場での実践の際は、現地管理者の上位管理者にコミュニケーションを取ってもらうように促したことも付け加えておこう。
この過程で現地管理者が育つだけではなく、現地管理者の上位管理者が部下への指導・助言、およびフォローの方法を体得していくことができる。最後は現地管理者自らが成果発表を行い、社長や幹部に成果と成長を認めてもらった。これで関連メンバーの成長が実現されたと考えている。
なお、この取り組みは一過性のものではなく、管理者になるための登竜門として定着した活動となった。コンサルタントが指導だけでなく、現地管理者の取り組みの質や内容に関する評価を行うことで、人事評価の一助にもなったのである。
第8回はタイの製造拠点における管理者を育成するための方針管理・日常管理運用の処方箋について説明した。次回は人づくりという観点で「タイでのマネジメントの難しさ」について具体的事例を交えて整理する。
コンサルタント 角田賢司(つのだ けんじ)
生産コンサルティング事業本部
プロセス・デザイン革新センターセンター長
兼 デジタルイノベーション事業本部 シニアコンサルタント
IEをコア技術として収益向上のコンサルティングに取り組んでいる。自動車(部品)、化学プラント、樹脂成型、建材、食品等、多業種で収益向上の支援を実施。現場の生産性向上、品質向上、調達コストダウンや在庫削減等複数テーマを同時に展開、マネジメントの支援を行う。近年はタイ・中国等の製造拠点支援として生産性向上や品質向上の成果実現と併せ、マネジメントの仕組みづくり、ローカル人材育成を実践