・方針管理の実態
方針管理については、製造拠点として総合的な目標を設定し、それを各部門や個人が受け取って目標や施策を展開、その実行管理を行うことが基本である。特に大切なのは、現状を正しく捉え、目標とのギャップがどの程度あるのか、そのギャップはなぜ発生しているのかを踏まえて目標を設定し、施策を計画的に実施していくことだ。しかしながら、多くの企業では総合目標も「前年比10%向上」「不良半減」などと、ただ決めただけというケースが多いように思う。
最大の問題は、その目標を達成するために何を行うかが具体的になっていないことである。目標そのものは必要性の観点から達成すべきものになっているが、それを実現できるように要因を追求し、施策を展開することができていないことが多く見受けられる。具体的には、現場の実態が見えていないため、とにかく言われた目標を受け取り、部門や工程に無理やり目標を割り付けてしまうのである。
受け取った管理者が目標達成のための道筋が描ければ問題ない。ところが、現場の実態を把握できていないため、現地管理者からの施策は期待できず、多くは日本人赴任者が一生懸命考えることになる。結果として、施策案は日本人頼みになり、現地管理者はますます日本人に言われたことだけをやればよいという状態になっていく。
ある日系タイ企業の社長が、「この拠点の管理者はPDCAサイクルを知っている。しかし実態はDo→Do→Doばかり」と嘆いたことが印象深い。これはまさに言われたことだけをやっている現場の実態を表しているのではないだろうか。
・日常管理の実態
先述した通り、方針管理で掲げる目標は日常管理ができている前提で策定されるものである。
例えば、不良率を2%から1%に削減するという目標があるとすれば、それは不良率2%がスタートとなる。しかし、現場で不良率が悪化し2%の実現すらままならないという現場も出てくる。こうした現場では、日々発生している問題や変動に気付けない、あるいは気付いても対処できていないと思われる。不良が増加しているという悩みを持った現場に行ってみたところ、現地管理者が意気揚々と他の作業者と同様に作業をしている姿を見ると、「問題や変動に気付くはずがない・・・」と心配になるほどである。
また、現地管理者が問題に気付いても解決する手段を知らず、ただ作業者に注意喚起するだけ、あるいは上司に報告するだけで自ら意思決定して行動を取れないなど、日常管理が機能していない現場も多い。
確かに方針管理における目標を自分事とし、さらに日々の目標に置き換えることは難しいことだ。職場の目標を日々の目標に置き換え、具体的に何を達成するべきか明確にして、目標達成への道筋をつけた日常管理ができるよう現場と共有することも忘れてはいけない課題である。