研究所・研究者は、一目置かれる存在であれ!
コーポレートラボはもちろんのこと、ディビジョンラボもその多くは、いわゆる"コスト・センター"である。今期の収益には直接寄与せず、今期はコストだけが計上(集計)される部門のため、会社の経営状況が苦しくなると、研究所のコスト削減(人員削減、研究者の事業部門への異動など)が行われやすい。時に"お取りつぶし"もある。
研究所の存続のためにも、研究の価値を分かってもらう目的で、上記で述べたような"投資対効果"を指標で示すことがよく行われている。指標によるアプローチも決して悪くないが、これについても指標でない方法が重要だと私は考える。
それは、研究している本人およびチームに期待を感じてもらう、信頼されるようになるというアプローチである。「なにを甘いこと言っているんだ!」と少々引かれてしまうことを覚悟で、最後に青くさく主張したいと思う。
かつて研究所はある種の"聖域化"されていた時代がある。「まあ、好きにやらせておこう。とやかくいう必要はあるまい」というノンビリとした古きよき時代である。
その後、経営環境が厳しくなり、目標管理的な仕組みや上記の指標化などが研究所にも導入されてきた。指標化して分かりやすくなるために導入されたという側面もあるだろうが、実際は研究者の言っていることは信頼されなくなったという要因も大きいのではないだろうか。経営陣から信頼されていないことが巡り巡って、「信頼していないから放っておけない。指標で示せ!」という構図になってしまっているようである。
とするならば、ことの本質は、指標を精度高く算出するということよりも、経営陣からの期待・信頼を得る(取り戻す)ことにあると私は考える。
そして、その期待・信頼とは、おそらく、はたから見てもはっきり分かるように必死感(悲壮感)漂うようにがんばる(というか、がんばっていることが他部門から分かるように見せる)ことではないはずだ。
研究は、その仕事の特性上、あくせく動けばよい結果につながるとは限らない。「どうしてのんびり仕事をしているんだ」というような表面的な批判は覚悟の上で、本質的に価値を生み出す努力をコツコツ積み重ねていくのが研究の仕事である。
大事なことは、経営陣や他部門の人たちに対して、日々のコミュニケーションの中で、その期待感・信頼感をもってもらえるような話をすることだ。例えば、「今、なにを研究しているの?」と雑談で聞かれたときに、「よくぞ質問してくれました。この研究は面白いんですよ。うまくできると将来、○○という世界になるんですよ。それが私の夢です」とイキイキ語ることに尽きる。
研究者がテーマにかける想いや将来の夢をイキイキ語り、聞いている人がワクワクする。そういう関係が築けることが期待感・信頼感の根幹なのだと思う。
研究所は経営陣や他部門から、「目立たないけど、筋のよい研究をやっているんだよな」「あそこは、放っておいていい。だって、よく面白いもの出してくるから」と期待され、感心される存在であるべきだ。
ここまで述べてきたような意味合いで、「研究所は聖域。とやかく言わずに、放っておこう」「信頼できる」「期待したい」と一目置かれる存在へとぜひ回帰していただきたい。
コンサルタント 塚松一也 (つかまつ かずや)
R&Dコンサルティング事業本部
シニア・コンサルタント
全日本能率連盟認定マスター・マネジメント・コンサルタント
イノベーションの支援、ナレッジマネジメント、プロジェクトマネジメントなどの改善を支援。変えることに本気なクライアントのセコンドとしてじっくりと変革を促すコンサルティングスタイル。
ていねいな説明、わかりやすい資料をこころがけている。
幅広い業界での支援実績多数。