欧州の「デジタル市場法」を警戒

 アップルは、iPhoneなどの同社製モバイル機器向けアプリをApp Store以外で配信することを認めていない。また、有料アプリに対して15~30%の手数料を徴収している。だがアップルや米グーグルのアプリストアを巡る不満はくすぶっている。こうした中、2社は、法改正に向けた動きや規制当局の監視、訴訟といった問題に直面している。

 EUの欧州委員会は20年12月、米IT大手を念頭に置いたデジタル規制法案を公表した。その1つである「デジタル市場法(DMA)」は、自社製品・サービスの優遇などを禁じたり、企業買収の際の事前通知を義務化したりと、巨大企業よる競争阻害行為の抑止を狙っている。

 アップルのティム・クックCEO(最高経営責任者)は21年6月、このデジタル市場法に触れ、サイドローディングを強制するものになりかねないと批判。「iPhoneにアプリをインストールするための代替手段となるもので、我々はiPhoneのセキュリティーを破壊するものと考える」と述べていた。

米国では「プラットフォーム独占終了法」

 米国では21年6月に、連邦議会下院の超党派議員が反トラスト法(独占禁止法)の改正案を公表。アップルなどが開発者向けプラットフォームを運営しながら、自社アプリを提供していることなどを問題視している。そのうちの「プラットフォーム独占終了法」と「オンラインにおける米国人の選択と技術革新法」が成立すれば、アップルはサイドローディングを認めざるを得なくなると指摘されている。

 米国での法改正案を受けて、アップルは同年6月に今回と同様のリポートを公表。ハッカーやネット詐欺師がApp Store以外でマルウエアをインストールさせ、利用者を危険にさらすと指摘した。これら一連のリポートは、法案に関する議員らの動きを強くけん制する狙いがあるとみられている。

 (参考・関連記事)「アップル、「App Store」の開放に断固反対の姿勢 | JDIR