次に「フードテック」(食料技術)について。

 2年前のCES 2020ではフードテックのスタートアップ、インポシブルフーズの初出展が脚光を浴びた。メイン会場であるラスベガス・コンベンション・センター前の駐車場に設営された屋外ブースで、新開発されたばかりの豚肉味ハンバーガーの試食イベントを実施、多くの来場者を引きつけた。

 インポシブルフーズは2011年にスタンフォード大学の生化学名誉教授だったパトリック・ブラウン(現CEO)によって設立された。牧畜を世界最悪の環境問題として捉え、肉の代替として植物由来の人工肉を開発したという経緯がある。

 フードテックへの関心の高まりの背景には、健康志向の定着やビーガンの増加だけでなく、食肉生産に伴う温室効果ガス放出や大量の穀物や水の消費などへの強い懸念が背景として根強くあることに注意が必要だ。

 2015年には同社は活動に賛同するグーグル・ベンチャーズやビル・ゲイツなどから合計1億8000万ドルの資金調達に成功。現在ではスーパーで人工肉バーガー、ソーセージを販売するほか、バーガーキングやディズニーとパートナーシップ契約を結び、インポッシブルバーガーが販売されている店舗は全米で2万店舗以上とされている(ちなみに同社は株式上場に向けた準備を進めていると噂されているが、企業価値は100億ドル前後と算定される見通しという)。

 CES 2022ではインポシブルフーズだけでなく、フードテックと親和性の高い「アグリテック」(農業技術)にも要注目だ。都会の超高層ビルや輸送用コンテナ、使われなくなった倉庫などで高さを利用して垂直的に農作物を生産する技術は「垂直農法」(Vertical Farming)と呼ばれる。従来の農業のように広い土地が要らず、光や水も効率的に活用できるので、大都市のど真ん中でも食物を生産できるという強みがある。実際に商用の都市型垂直農場としてはアラブ首長国連邦のドバイやフランスのパリで導入事例がある。

 CES 2022ではスタートアップのグロブ・テクノロジーズ(Grov Technologies)、農機具メーカーのジョンディア(JohnDeere)がアグリテックで出展を予定している。

健康志向の高まりや地球温暖化対策などの追い風でフードテックは注目のカテゴリーだ。CES 2020では話題のインポシブルフーズが出展し、豚肉バーガーの試食イベントを行った(筆者撮影)

急拡大する「ビークルテック」、祭典の華になるか「インディ・オートノマス・チャレンジ」

 CTAが5月下旬に発表したプレスリリースによると、CES 2022の「ビークルテック」領域にはアウディ、ダイムラーAG、ゼネラルモーターズを筆頭に175社を超える企業が参加をコミットしたという。175社という参加企業数はCES 2020に比べても12%増という(12月の段階での集計ではもっと増えているに違いない)。

 そして、大方の予想通り、ビークルテックのメイン展示会場は従来のラスベガス・コンベンション・センターの北ホールから道路を隔てた西側の広大な空き地に建設が進んでいた西ホールに移動することになる。2017年に半導体(GPU)メーカー、エヌビディアのジェンスン・ファンCEOが業界の垣根を超え、自前の自動運転SoCで自動運転の領域に華々しく殴り込みをかけて以来、トヨタの豊田章男社長による「モビリティ・カンパニー」への『なりわい革新宣言』、「ウーブン・シティ(Woven City)」構想などモービルテックはCESという先進テクノロジーの祭典を牽引してきたイメージが筆者には強い。

 ビークルテックの中でも特に自動運転の領域では、「インディ・オートノマス・チャレンジ(Indy Autonomous Challenge、以下IAC)」の展示と結果発表がテックの祭典に彩りを加えるだろう。

 IACは世界11カ国から約30の大学チームが参加して、今月10月23日にインディアナポリス・モーター・スピードウェイ(インディ500が行われる。以下IMS)で開催される、本物のレーシングカーを改造して超高速での自動運転技術を競うレースイベントだ。CES 2021で、主催団体であるIMSとESN(Energy Systems Network)によって開催の概要がアナウンスされ、最近になってシスコのスポンサードが発表された。