大野知事が考える「DX実現に必要な3つの要素」

 3つ目のフェーズであるDX実現のために、欠かせない3つの要素があると大野知事は言う。

「1つ目は、トップダウンによる強力な計画の推進です。目指す社会をトップ自ら語り、自ら旗振りすることです。2つ目は、組織横断的な連携と実行です。縦割りのままでは、個々の単位のデジタル化しかできません。課や部の枠組みに横串を通して、課題解決に向かう必要があります。3つ目は、ビジョンおよびロードマップの明確化です。DXで目指すゴール、そのための戦術的な目標、課題、KPIを全体で共有していくことです」

 実際、埼玉県ではこの3つを踏まえ、取り組みを進めている。DX推進会議という会議体に対し、知事が指揮を執る形の推進体制を構築。知事自ら会議に出席し、ビジョンを職員に語り、意識を高めるためのプレゼンも行った。

 また、組織横断型のDXプロジェクトを発足させた。プロジェクトマネージャーを頂点として、統括ユニットと16の部局ユニットで構成し、中堅、若手職員を中心に約240人体制でDXのビジョンを検討している。
そしてビジョンの共有にも取り組んだ。

「今年4月から8月、関係ユニットが連携し、ビジョンを明確化しました。現在、レビューを行ったところですが、その内容は多くの職員がZoomで視聴しました」

「私たち行政に関わる者は、制度や予算の枠組みの中で考えることが多く、ビジョンより執行に傾きがちです。ゼロベースで将来を描くことは困難でしたが、各自がアイデアを出し合い、具体的なビジョンづくりを進めました。まだ検討やブラッシュアップが必要ですが、皆が参加することでトランスフォーメーションの具体イメージが共有され、より良いビジョンが浮かび上がるはずです。今後もアジャイル的に積み重ねていきます」

 DXの実現は、地方自治体だけではできないこともあり、基盤整備、制度改正、支援について定期的に国へ要望を実施している。今後も埼玉県内にとどまらず、国、各都道府県、市町村と連携して取り組んでいくという。

「DXにおいて重要なのは、D(デジタル化)ではなくX(トランスフォーメーション)。デジタル化はあくまで手段です。県庁や社会の変革がどうあるべきか、描けなければDXを実現できません。社会が求める変革をビジョンとして共有し、デジタルを技術としていかに活用するかが重要です。埼玉県をトランスフォーメーションするためのデジタル活用を、今後も強力に推し進めていきます」