埼玉県に見る「県政DXの3つのフェーズ」

 DX実現には3つのフェーズがある。最初はデジタルパッチ、デジタイゼーションと呼ばれるアナログからデジタルへの置き換え。次に、デジタルインテグレーション、デジタライゼーションと呼ばれる、デジタル化による新たな価値を生むフェーズ。そしてDX、デジタル技術、デジタルサービスが業務環境や生活サイクルに浸透し、変革していくフェーズだ。

 昨年のコロナ禍で顕在化した、県庁の内部事務・行政サービスのデジタル化の課題とそれに対する取り組みを3つのフェーズに分けると、下図のようになる。

「初めのステップは、紙主体の業務からの脱却です。私の就任直後から、ペーパーレス化を県庁のデジタル化の象徴として推進しました。大型モニターを導入し、Web会議も活用。例えば、昨年は県の新型コロナウイルス対策本部会議、次年度新規事業の審議についてもペーパーレスで行いました。

 さらに決裁のペーパーレス化のために、モデルとなった所属に紙の利便性をペーパーレスで実現する支援ツールを導入し、令和2年度でコピー使用量は前年度比で61%削減しました。今後はこれを全庁に広げ、今年度は令和元年度比で50%削減、来年度は60%の削減を目標にします。達成できれば約2.7億円の印刷コスト削減になります」

 ペーパーレス化がある程度進んでいたことが、コロナ禍で必要性の増したテレワーク推進に大きく寄与したと大野知事は言う。平成29年からサテライトオフィス導入など、働き方改革を進めてきたが、紙主体の業務がネックとなり、在宅勤務には踏み切れていなかった。しかし、コロナ禍で職員1万人中3500人がテレワークに移行。現在も一定の利用者数をキープしている。

DXの実現は長期的な視野で取り組む

 2つ目のステップでは単なるデジタル化ではなく、業務プロセスなど抜本的な見直しを行う。埼玉県の取り組みでは、行政手続きのオンライン化がこれに当たる。

「大きな阻害要因になっていた押印の廃止を実施し、申請者に求めていた押印の96.4%の廃止を決定しました。国に法令改正などの要望を出しており、さらに進めていきます。また、一度入力した申請内容を変更時に再び入力せずに済む『ワンスオンリー』の実現を目指しています。

 AI技術の活用としては、AIチャットボット『埼玉コンシェルジュ』が県の総合窓口として昨年7月から稼働しており、24時間365日、問い合わせに対応しています。さらに、埼玉県と県内の市町村が共同で使えるプライベートクラウド『埼玉県クラウド』を構築し、令和元年度から活用を始めています」

 埼玉県クラウドは現在、県を含む16団体が利用している。今後、DXを効果的に推進するためには自治体の壁を越え、全ての市町村が力を合わせていく必要があるという。

 さらに、デジタルを活用した業務プロセス変革は、さまざまな分野で行われている。

「例えば、建設業においては、ICT施工による安全性、生産性の向上を図っています。ICTを活用した測量による三次元データをデータベース化しており、ロボット技術と連動させ、いわゆる3K(きつい、危険、汚い)といった建設業の課題解決を目指します。また、これらのデータを災害対応に活用していきます」

 3つ目のステップ、デジタルが浸透することでさまざまな社会変革を起こすフェーズ、DXの実現に向けては長期的な視野で取り組む。その出発点が今年3月に策定した「埼玉県デジタルトランスフォーメーション推進計画」だ。

「この計画は10年後のビジョンに向かいながら、3年という短期間の計画をKPIに基づいて推進していくものです。初年度である今年は、目指すべき将来像やビジョン、それを実現するためのロードマップを作成しています」

 計画では、基本施策として、県民サービス、事業者サービス、行政事務という3つを対象に置いて、9つのターゲットを定め、サービスのオンライン化や情報の一元化、データ連携、デジタルインフラの整備などを盛り込む。

 また、これらを支える共通施策として、セキュリティーおよび個人情報の適正な運用、デジタルデバイドの解消、ICTの支援による業務継続性の確保を挙げている。この計画は県のホームページで公開しており、誰もが参照できる。