アマゾンは、広告事業の売上高を公表していない。だが、広告収入が大半を占める売上高の「その他」項目は21年4~6月期に前年同期比87%増の79億1400万ドル(約8700億円)に達した(アマゾンの決算資料)。

 米調査会社のジャンプショットによると、米国ではECの買い物客が商品を探す際、グーグルなどのネット検索サービスではなく、アマゾンのサイトで検索する人が増えている。その広告効果に期待する一般消費財メーカーや小売業者がアマゾンに広告を出稿している。

 こうした中、アマゾンは広告技術の向上を図り、様々な広告枠を提供するようになった。例えば米調査会社のマーケットプレイス・パルスによると、同社は商品詳細ページの下に関連商品や評価の星が4つ以上の商品を表示している。これらはいずれもスポンサープロダクトだという。

 20年には「おすすめ商品」の欄にスポンサープロダクトを表示する試みを始めた。それまでアマゾンのサイトでよく見かけた「この商品を買った人はこんな商品も買っています」や「この商品をチェックした人はこんな商品もチェックしています」の表示件数が徐々に減っているという。このほか同社は動画広告や、特定ブランドの一連の商品を1ページに表示する「スポンサーブランド広告」も展開している。

背景にアマゾンアグリゲーターの存在

 EC市場におけるシェア拡大に伴い、アマゾンの広告料金が上昇していると、CNBCは報じている。21年8月における、アマゾンの検索広告の1クリック当たりの料金は1.27ドルで、1年前から48%上昇した。

 出品者はアマゾンに対し、取引手数料や物流サービスの費用なども支払っており、今では商品販売価格の5割以上をアマゾンに支払う大手も珍しくないという。こうした料金上昇の背景には、アマゾンアグリゲーターと呼ばれる、アマゾンセラー(出品者)買収ビジネスの存在があるとCNBCは伝えている。

 アマゾンアグリゲーターは、ベンチャーキャピタルから得た豊富な資金と優秀な人材(ECエキスパート)を武器に中小のアマゾンセラーを買収し、事業を拡大させている企業。積極的な投資で事業拡大を図っており、アマゾンに支出する広告費も増えている。彼らの存在が、アマゾンの広告事業急成長の一因になっているという。

 (参考・関連記事)「米ネット広告市場、コロナ禍も2桁成長維持 | JBpress