FATFの評価は、良い方から「通常フォローアップ国」「重点フォローアップ国」「観察対象国」の3段階に分けられますが、今回の報告書では、マネロン・テロ資金供与対策の取り組みに関し、日本は「重点フォローアップ国」と評価されています。この評価は、日本がマネロン・テロ供与資金対策の面でなお努力の余地があることを示しています。もっとも、FATFの審査対象となっている国々の中で、「重点フォローアップ国」は米国・中国など過半を占めており、日本の評価が目立って低いわけではないというのが、妥当な見方でしょう。

マネロン規制は金融デジタル化の副産物

 これを受け、財務省も金融庁も、マネロン・テロ供与資金対策を重視し、しっかり取り組んでいく決意を表明していますが、本稿では、デジタル化社会の観点から、この問題を考えてみたいと思います。

 FATF成立の前年である1988年、銀行規制の分野では、既に国際的な合意である「バーゼル合意」が成立していました。このことが示すように、マネロン規制は、金融規制の中ではかなり新しい領域です。

 1968年に連載が始まった劇画「ゴルゴ13」には、「報酬は俺のスイス銀行の口座に振り込んでくれ」というお決まりのセリフがあります。国際送金からゴルゴ13のスナイパー活動が捕捉されることはないと考えられていたわけです。このように、かつては「お金に色は無い」と言われ、お金の流れから違法行為などを見抜く発想はほとんどありませんでした。

 その後、FATF設立とほぼ同時代の1987年に制作された映画「マルサの女」には、主人公がお札にマジックで印をつけて脱税を見抜くシーンがあります。これは、「お金の流れから背後の違法行為を見抜く」という、新しい時代の幕開けを象徴するものだったかもしれません。

 その後のマネロン規制は、2001年の米国の同時多発テロ事件に加え、キャッシュレスやデジタル技術の発達、金融産業の構造変化などの中で拡大してきました。