エピックは今後、規約違反によって生じた損害の賠償をアップルに支払う必要がある。ただ、エピックは21年9月12日に一審判決を不服として控訴する方針を示した。
「長年閉じていたApp Storeに水漏れの穴」
21年9月1日、アップルは、App Storeを調査していた日本の公正取引委員会との和解に伴い、規約の一部を改定すると明らかにした。雑誌や新聞、書籍、音楽、動画といった購入済みのデジタルコンテンツやサブスクリプション(継続課金)コンテンツを閲覧・視聴する「リーダーアプリ」を対象に、開発者が自社ウェブサイトへのリンクを1つ設置することを認めるとした。開発者はこのリンクから自社サイトに利用者を誘導できるようになる。ただ、アップルがこの時定義したリーダーアプリにゲームは含まれていない。
今回のロジャーズ判事の判決は、ゲームについてもリンク設置の容認を命じる踏み込んだ内容となった。今後、ゲームアプリの利用者は外部決済システムを利用しやすくなる。これについてウォール・ストリート・ジャーナルの別の記事は、「長年閉じていたアップルのプラットフォームに水漏れの穴が空いた」と報じた。
アップルのサービス事業にとって貴重なゲーム分野でも手数料支払いの回避が容易になるからだ。ロジャーズ判事によると、App Storeの売上高全体に占めるゲームアプリの比率は70%に上るが、ゲームアプリの数は全体の10%にすぎないという。
アップルは今回の判決について控訴するかどうか明らかにしていない。このまま命令に従えば、ゲームからの課金手数料収入が減ることになり、App Storeの事業が打撃を受けることになる。ウォール・ストリート・ジャーナルは、スマートフォン「iPhone」などの売り上げに周期的な偏りが生じるビジネスモデルからの脱却を図るため、同社は事業の多角化に力を入れている。その重要な役割を担うのがApp Storeなどのサービス事業だという。
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