センスメイキングができる組織へ成長しよう
さらに宇田川氏は、M.コーエン、J.マーチ、J.オルセンが提唱した「ゴミ箱モデル」を引用しながら、成功したイノベーションには「課題の仕入れ(現場を見て顧客や潜在顧客の困りごとを仕入れる)」「解決先の仕入れ(課題に適した解決策を見つける)」「機会の探索(市場に出すタイミングを見つける)」「人々の参加者の促進(参加者を募る)」があると話す。
「これら4つが結び付いたところにセンスメイキングが生まれます。センスメイキングとは、小さな手掛かりをもとに起きている出来事の意味が構築されることです。例えば、組織事故研究では、小さなインシデントをアクシデントにしない背後には、小さな手がかりに、異変のきっかけを察知して、それがもたらす帰結を想像するセンスメイキングの過程があります。
そうすることで、大きな問題になることを防いだり、問題が起きても復旧力を高めることができます。これはポジティブな取り組みにも大切なことで、小さな機会の発見を大きなチャンスにつなげていくことが、センスメイキングに当たります。それができる組織では群知能が発揮され、万人によるセルフケアで組織の慢性疾患に対して変革し続けられます」
宇田川氏は、「好きな一節」として、「企業社会は、企業が自らの成員に対し、社会的な位置と役割を与えるときにのみ機能する。そして企業内の権力が、その成員による責任と意思決定を基盤とするとき産業社会も初めて自由な社会となる。今日必要とされているものは、全面計画でも19世紀のレッセ・フェールでもない。分権と自治を基盤とする産業現場の組織化である。」という、ドラッカーが彼の最初期の著作『産業人の未来』で語った一節を挙げる。
「企業というものは、人々(社員)が『自分も何か良くしていくことを諦めなくていい、自分にも何かができる』、そうした役割を与える共同体です。会社のメンバーが自分が何かを成していることの意味を見出すことができること、その状態を構築すれば、自らの自発性を持ち続けることができます。
誰か強いリーダーや優れたリーダーが1人現れて変革してくれるのを待つのではない。構成員の一人一人が変革の主人公だと自覚できるよう、経営者は社員の自発性とセルフケアを促していくべきです」