「国安法」施行から1年、香港離れか
香港では20年6月30日に反体制活動を取り締まる「香港国家安全維持法(国安法)」が施行された。このとき、フェイスブックやツイッター、グーグルなどの米SNS(交流サイト)運営大手は、当局への利用者情報の提供を一時停止したという経緯がある。
国安法では国の分裂や政権の転覆などの行為を国家の安全に危害を加える犯罪行為として規定。国家安全を脅かすと判断した電子メッセージについては、当局がプラットフォーム企業に対し情報の削除やアクセスの制限を要請できる。
フェイスブックや傘下のインスタグラム、ツイッター、グーグル傘下のユーチューブなどは、中国本土での利用が禁止されていたり、中国政府による検閲を嫌い、自主的に撤退したりしている。
中国本土には「グレート・ファイアウオール(金盾)」と呼ばれるインターネット検閲システムがあり、ネット上の情報を24時間体制で監視している。
一方で、各社は香港で自由にサービスを展開。香港市民もかつて、これらのサービスで政治的な意見を述べたり、抗議活動への支持を表明したりしていた。
しかし国安法施行後に相次いだ民主活動家らの逮捕を受け、多くの人はSNSを使わなくなった。利用を続けている人は投稿を自身で検閲しているという。
ウォール・ストリート・ジャーナルによると、香港は人口750万人と、利用者規模では小さな市場。しかしグローバル企業はその自由な情報の流れを理由に、ここに拠点を構えている。
だが、最近は政治情勢の変動や中国政府からの厳しい締め付けを背景に、シンガポールなど他の地域への移転を検討する企業が増えているという。
(参考・関連記事)「SNS、「香港国安法」で当局へのデータ開示一時停止」