また、お店でモノを売る人の立場からすると、片や価値の安定した米ドルがある中、代金として受け取ったビットコインの価値が持っている間に下がったら大変だと思えば、やっぱりウチの店ではドルで払ってくださいとなりがちです。そうなると、いくら法定通貨だと言っても、本当に日常取引で広く使われるだろうかという問題もあります。実際、取引をするかしないかは当事者の判断に委ねられていますので、いくら「法定通貨」だと言っても、一般の商店に必ず受け取れと強制することまでは困難です(例えば、スウェーデンのクローナも中国の人民元も「法定通貨」ですが、スウェーデンや中国には「現金お断り」のお店がたくさんあります)。エルサルバドルでも、結局、国内のいくつかの場所にビットコインの両替機を置くだけになってしまう可能性もあるわけです。

「コミュニティ」の可能性は犯罪リスクと裏腹

 もちろん、ビットコインの法定通貨化に、付随的効果が全く想定できないわけではありません。例えば、ビットコインがランサムウェア犯罪の身代金に使われる事件(システムに不法侵入してデータなどを使えなくしてしまい、復旧させる条件としてビットコインの支払を要求する)などを踏まえ、その取引に対し厳しい態度をとる国々も多い中で、今回の法定通貨化は「エルサルバドルはビットコインに好意的な国だ」という見方につながる可能性があります。そうなると、ビットコインを使っていろいろなビジネスをしようと考えている人々が、エルサルバドルに集まってくるかもしれません。

 しかし、本当にそうなるかは、エルサルバドルのビジネス環境やシステム開発環境、治安など、総合的な要素に強く左右されます。また、「規制の緩さが人々を引き付ける」ということは、ビットコインに絡むマネロンや犯罪の拠点になってしまうリスクとも裏腹です。そうなると、他国も静観してはいられなくなるでしょう。

 また、報道によれば、エルサルバドルは自国の地熱発電による電力をビットコインの「マイニング」に使う意向を表明しています。しかし、「脱炭素」が世界的な課題となっている中、地熱発電のような貴重なクリーンエネルギー源があるならば、他に使いたいというニーズが出てきそうにも思えます。