長期視点で発想できる評価制度を設けよ

――DXを成功に導くには、新しい価値観や基準での人材育成が必要で、情報システム部門においては特に重要ということですが、育成のポイントはどういうものでしょうか。

横塚氏 企業のビジネスモデルを変えられるほどのイノベーターになるには、今までの成功体験をすべて捨てて、新しいビジネスモデルを考える力が必要です。これは情報システム部門であってもビジネス部門であっても同じです。会社や業界の常識を一度白紙に戻して、新しい時代のビジネスはどうあるべきか、お客様はどう思うか、さらに地球温暖化のことや将来のデジタル技術のことまで、すべて含めてゼロから発想できる人を育成しなければいけません。

会社や業界の常識を一度白紙に戻して、新しい時代のビジネスを考える力が必要
(PHOTOGRAPH BY Startaê Team / UNSPLASH)会社や業界の常識を一度白紙に戻して、新しい時代のビジネスを考える力が必要 (PHOTOGRAPH BY Startaê Team / UNSPLASH)

 DX人材と呼べるのかもしれませんが、そういう人材が少なくて皆さん困っていますよね。情報システム部門にもビジネス部門にも、さらにITベンダーにもコンサルタントにもいない。日本中にいないから、DXで成功している会社もない。だから、これはなかなか難しい問題でもあるわけです。

――企業としては、経営者やリーダーが危機感を持ち、それを現場にしっかり伝えて改革に取り組む形が理想であると思います。一方で、従来の情報システム部門はセキュリティ面などを含め、いかにリスクを減らすかという「守り」のミッションを担ってきました。このような姿勢を変える方法はありますか。

横塚氏 1つは評価制度を変えることです。私が現場にいたころは、1年間の評価で翌年の給料の3割をアップダウンさせるという、短期的視点の評価制度が主流でした。しかし、それだとチャレンジが難しい。研修を熱心に受けていたら、あいつは仕事してないとか言われて給料を減らされてしまう。当然、長期的なビジョンを持ったり、10年後どうするか考えたりできなくなりますし、それではクリエイティブな発想が生まれません。

 短期的な評価をやめたらサボるのではないか、という意見もありますが、そんなことはないですよ。人間というのは、そうなったらむしろ伸び伸びと考えるようになります。短期的に競争させれば一生懸命働くだろう、という考え方は、20世紀の軍隊型です。もちろん既存のビジネスもあるので、四半期でしっかりプロジェクトマネジメントすることは当然として、もっと長期に物事を考えられる仕組みを取り入れるべきでしょう。

 もう1つは人事制度を変えることです。同期が10人入社したら、そのうち4人が課長に、1人が部長になります。すると社内で出世競争が起きます。出世するために、「既存のビジネスでどう成果を出すか」だけ考えるようになるので、やはりクリエイティブな発想になりにくい。ゼロから新しいことを考えようという思いも、どんどん潰されてしまいます。

 クリエイティビティが生まれない組織、軍隊型のビジネスを前提にしたピラミッド型組織は、これからは通用しません。何でも自由に発想して、互いに言いあえる社内カルチャーをつくるには、今の人事制度は適していないと思います。