コンサルティング大手のアクセンチュアとIT大手のマイクロソフトによる戦略的合弁企業として2000年に誕生したアバナードは、これまでグローバルで1200社以上の変革を支援してきた。そのアバナードに現在、クライアントから寄せられるデジタルトランスフォーメーション(以下、DX)関連の要請の中でも特に目立っているのがRPA(Robotics Process Automation)に関わるものだという。そこでアバナードのRPA関連プロジェクトをリードする2人に、日本におけるDXの現状と課題を語ってもらった。

RPAをお手軽な便利ツールで終わらせるか
DXの切り札にするかは意思決定者次第

 デジタル分野の実績で他のコンサルティングファームを凌駕するアクセンチュアと、「Microsoft Azure」や「Microsoft Office 365」などエンタープライズ領域で絶対的地位を確立しているマイクロソフト。両社の強みを生かすことで20年足らずのうちにプレゼンスを確立したアバナードには、3年ほど前からRPAに関わる相談が急増してきたという。

「RPAの普及は金融業界が発端でした。そしてその後、他の業界からもさまざまな問い合わせや相談が寄せられるようになりました」

アバナード株式会社 グループマネジャー 保坂清史氏

 そう語るのは、アバナードでRPA絡みの案件をリードしているグループマネジャーの保坂清史氏だ。RPA導入がある種のブームのようになってしまう前の段階、つまりグローバルでトップクラスの金融機関がロボティクス技術を用いたRPAの導入に踏み切り始めた時期から深く関わってきた同社は、UiPath社やBlue Prism社など、ロボティクスオートメーションと呼ばれるテクノロジー領域の主要プロバイダーと早期から提携してきた。しかし、そうした立場だからこそ昨今のブームのような状況には懸念を抱いているようだ。

「過去にあったITツールの導入ブームと似たような感覚でRPAを捉えている企業が少なくありません。もちろん、RPAは使い方次第で非常に有効なツールと成り得ますし、旧来のITツールとは異なり、複雑なプログラミングを必要としないという突出した手軽さもあります。このため、その点にばかり目がいってしまい、リーズナブルに取りあえず導入してみよう、という感覚に陥ってしまいがちなのです。しかし、私たちとしては、『目先の小規模な業務改善ばかりではなく、中長期的な経営上の成果につなげるチャンス』としてRPAを理解し、活用してほしいと考えています」(保坂氏)

 保坂氏の言葉を受け、営業マネジャーとして数多くの顧客企業と接している松野克彦氏も口を開く。

「その他の多くのITツールのように、経営陣の意思決定を仰ぐまでもなく、例えば部長決裁レベルで入れられる安価なツールであるかのような目線でRPAを見ているのだとしたら、本当にもったいないことなのだというお話を、さまざまなところでさせていただいています」(松野氏)

アバナード株式会社 営業本部 マネジャー 松野克彦氏

 確かにDXに携わる関係者の中には「RPAの導入は本質的なDXとは異なる」といった趣旨の発言をする人も少なからず存在するが、保坂氏、松野氏に言わせれば「RPAを単なる業務効率化の道具で終わらせるか、デジタルによる企業変革=DXにまで昇華させるかは、導入する企業の捉え方や姿勢次第」ということになる。それでは一体、RPAを安易に考える場合と、そうではない場合との間にどんな相違があるというのか。