日本企業は社外や海外から学ぶべき

――長期的な視点を持ったりクリエイティブな発想を生み出したりするために、情報システム部門の一人ひとりができること、すべきことはなんでしょうか。

横塚氏 極端な言い方をすると、会社に行かないことですね。会社に行って同僚とだけ話している間は、クリエイティビティが生まれる可能性は低いでしょう。必要なのは、これから何をすべきかと考えて顧客の悩みを聞いたり、あるいは技術面でいえば社外の優秀なエンジニアたちとコミュニティを作って一緒に研究したり、会社を離れて活動してみることです。

 会社の同僚も大切な仲間で社会の一つではあるけれど、会社の将来を自分でなんとかしなければと思えば、自然と社外にも目が向くはずです。9時~5時で出社する前提の制度は前時代的ですよ。変化に適応できなければ会社が死ぬかもしれない、という瀬戸際になって、毎日会社へ行っていられますか。

 そうなったら、もちろん上司は「会社に来ないと給料下げるぞ」なんて言ってはいけません。大企業の社員でも「DBICの研修に参加するために、上司に説明するのが面倒だから有休取ってきました」とおっしゃる気の毒な方が多くいます。それでは、10年後の新しい世界なんて到底作れるわけがないんです。

――多くの企業がDXの前段階で試行錯誤しているということであれば、国内の企業から手本を探すよりも、海外に目を向けるほうがよいということでしょうか。

横塚氏 そうです。日本は、ジャパン・アズ・ナンバーワンと言われた瞬間に成長が止まってしまいました。いまだに、日本が世界でナンバーワン、品質ナンバーワンだと誤解している人は多いでしょう。それが、今回のコロナ禍でいかに間違っていたかが明らかになったことは、不幸中の幸いと言えるかもしれません。

 DBICが提携しているスイスのビジネススクール「IMD」では、世界競争力ランキング*1を毎年発表しています。2020年の日本は過去最低の34位になってしまいました。さらにこのランキングは「経済状況」「政府の効率性」「ビジネス効率性」「インフラ」という4つの要素から成っていますが、ビジネス効率性で日本は55位です。これはかなり深刻で、危機感を持たなければいけません。

*1 IMD 世界競争力ランキング 2020年(https://www.imd.org/news/updates/IMD-2020-World-Competitiveness-Ranking-revealed/

 DXにおいても、日本は世界の先進国から外れるどころか、3~4周遅れと言ってもいいくらいですよ。メディアでも、「この企業はDXにがんばって取り組んでいます」なんて、のんきな記事を出してばかりいないで、もっと真実を伝えるべきです。

――情報システム部門をはじめ、日本企業が守りの姿勢から攻めの姿勢に変えていくために、参考にすべき地域や国はありますか。

横塚氏 シリコンバレーやイスラエルを視察する企業は多いですが、私が注目しているのはデンマークやスイス、スウェーデンといった北欧の国です。競争力ランキングでも日本より上位ですが、彼らがどういう考え方で世界的な競争力を発揮しようとしているのか、あるいはそれらの国の企業がどのようにビジネスをしているのか、学ぶべき点は多いです。

 日本は学ぶ力が弱いのかもしれませんが、学ぼうとすると上司からサボっていると言われかねないことも課題です。中国はもちろん、台湾も韓国も、日本よりよほど進んでいますよ。ところが、日本は韓国や台湾には勝っているはずだ、という意識が少なからずあって、学ぼうとしません。おごりがあり過ぎるように私は思います。

 ビジネスだけでなく情報システムについても同じで、いいシステムを作ろうと思ったら、普通は実際に現場を見に行きたくなるものです。今社会から求められているのは、言われたことだけやるのではなく、自ら学び続けるエンジニアです。