品質保証基盤の強化に取り組め
品質を強く進化させるには、改めて品質保証基盤の見直しが必要となる。それは、弱点の個別改善ではなく、体系的な全体の改革である。品質保証基盤を強化する3つのキーポイントに着目しよう。
ポイント1:品質の再定義
まずは改めて自社の「品質」とは何かを再定義する。品質の定義こそが保証の議論の出発点である。一言で「品質」といってもその定義はさまざまだ。広義に捉えるか狭義に捉えるかは、組織の中でも人によって見解は異なる。ましてや、製品の機能・付加価値が進化することを考えると、「品質」の定義も一定ではなく変化するものであり、常にこれを議論できている企業はそう多くない。
個別の製品仕様に関する品質保証項目を検討するとしても、その大本となる「品質」がどう定義されているかで目の向け方や検討の幅も異なり、場合によっては製品を発売した後からの対応に迫られることもあるだろう。従来の品質管理ではカバーできない事項も存在し、今後も新たな事項が生まれてくる。
しかも、顧客はハード面の品質だけでなく、ハードに付随するソフト面の品質もセットにして評価する。ひと昔前の製品には存在しなかった品質が出現しており、それを管理し保証していく体制は、製品開発と一緒に構築していかなければならない。
ポイント2:品質マネジメントレベルの見える化
次に、品質マネジメントレベルの見える化を行う。ここで問題になるのが、レベルをどのような指標で捉えるかである。品質に関する管理指標には、クレームの発生件数、品質不具合の発生率、製造工程の良品率、工程能力、品質コストなどさまざまある。製造だけでなく企画から設計開発、調達、アフターサービスまでの全プロセスにわたっての品質を考えたとき、その幅は多岐にわたり、単純な足し算も難しく、総合的に見たらどのような指標が適しているかを一言では語れない。
そこで、品質マネジメント全体のレベルを体系的に捉える独自の指標が必要となる。日本能率協会コンサルティング(JMAC)では、品質マネジメントを「戦略」「仕組み」「実施」「基盤」の4つ領域(後述)で構成されるものと定義付け、このそれぞれの領域における機能の充足度合い、管理・運用の状態、パフォーマンス実績などから、各要素を5段階で評価した「品質マネジメント成熟度」の導入を支援している。
ポイント3:目指す姿の全社的合意形成
次に、今のポジションを明確にして、目指す姿とそこにどのように到達するかを描く。当然ながら、いきなり目指す姿にたどり着くのは難しく、段階的な成長を計画していくことになる。具体的な品質管理に関する技術開発課題、仕組み(QMS)の改革課題、今後の品質保証体制、品質パフォーマンスの改善課題、そして人材育成課題などを必要かつ実現可能なスピードでバランス良く進めていく。
JMACはこの計画を「品質保証ロードマップ」と呼び、策定の支援を行ってきた。優先順位の考え方にしても解決方法の選択にしても、多種多様なオプションが考えられ、恐らく組織の中でもさまざまな意見が飛び交うであろう。それだけに明確な方向付けとその全社的合意形成には十分な議論をすべきである。