設備保全管理から設備ライフサイクル管理へ

 ここまでは「IoTを活用した保全の効率化」について説明してきたが、対象となるのは現在稼働している設備に対しての保全業務だけである。さらなる効率化や合理性を狙うのであれば、時間軸を広げて設備の開発設計段階から廃棄までの「設備のライフサイクル」を通じたメンテナンス管理も考えていく必要がある。

 開発設計段階からIoTを活用したメンテナンス管理も検討し、ライフサイクル・コスティング(Life Cycle Costing:LCC)で設備ライフサイクル全体のコスト最小化を図る。それにより、ライフサイクル間を保証するための保全技能者の確保や技能育成が明確になる。同様にシャットダウンを外注する場合は、外注業者の事業承継・技能承継などを評価するなどのリスク管理も課題として見えてくるだろう。

 また、今は高価で手が出ないユニットであっても、将来、価格が下がれば実装した方がよいものもある。いくらまでユニットの価格が下がればユニット更新なのかという意思決定モデルなど、設備のライフサイクル全体にわたって、あらかじめシナリオを考えておくことも重要である。

 想定したシナリオ通りに設備管理ができているかどうかは、これからの時代のキーポイントであると考える。

コンサルタント 鐘ヶ江克則(かねがえ かつのり)

TPMコンサルティング事業本部
インテリジェントメンテナンスセンター センター長
兼 デジタルイノベーション事業本部 チーフ・コンサルタント

大学卒業後、電気メーカーの生産技術者を経てJMACのコンサルタントに。生産戦略、生産方式、設備管理を専門領域とし、国内・海外の製造業において生産性改善、コストマネジメント、不良削減、在庫削減、リードタイム短縮など数多くのプロジェクトを支援。 現在、高度設備保全技術の研究及び設備保全業務のDXについて取り組んでおり、関係執筆も多数。