これに対し、「一般利用型CBDC」の検討を行っていたのは、これまでは、国内に特殊な事情を抱えている国々に限られていました。例えば、国内の現金がGDPの1%台にまで急減し、現金を入手しにくい人々まで現れているスウェーデン、国内でドルが流通し、自国通貨のインフラ整備が遅れているカンボジアなどです。

一般利用型CBDCの取り組み

リブラ、デジタル人民元、COVID-19

 しかし最近では、多くの国が一般利用型CBDCの検討に乗り出しています。このきっかけとなったのは、フェイスブックが主導する「リブラ」、中国のデジタル人民元、そして新型コロナウイルス(COVID-19)です。

 まず、2019年6月に計画が公表されたリブラは、安全資産を100%裏付けとすることで価値の安定を図る暗号資産です。フェイスブックには既に20億人を超えるユーザーがいることから、「本当に世界的に使われるかもしれない」と、各国当局の警戒を呼んだわけですが、同時に各国当局に対し、自国のデジタル決済プラットフォームを整備する必要性をあらためて認識させる契機にもなりました。また、リブラは、貧しい人々などの送金の不便を解消することを目的に掲げています。したがって、リブラの動きに歯止めをかけようとすれば、そうした不便を当局が自ら解消するよう迫られることにもなります。

 中国のデジタル人民元(DC/EP)については、第6回で解説したとおり、この4月から試験的発行を国内4都市で始めています。経済大国である中国のデジタル人民元の検討加速は、各国の取り組みにも火を点ける形となりました。