こうしたジレンマ解消にには以下の視点からの取り組みが必要である。

(1)「量」から「質」向上の目標へ

 企業の成長には、インプット量の削減だけではなく、「質」(アウトプット)の向上が必要だ。

 しかし、「質」目標の設定は曖昧になっているケースが多い。経営理念・ビジョンの実現や、従業員一人一人がどのような状態を目指したいのか、などの視点からの「質的な状態目標」の設定とその共有・共感が重要である。

(2)中長期的な課題解決のための時間確保

 労働時間の制約が少ない環境下ではやるべきことを積み上げ、達成に向けてマンパワーをたくさん投入して、「とにかくがんばる」やり方で対応できていた。

 つまり、やるべきことが優先で人や時間の確保は後回しだったのだ。しかし、働き方改革でマンパワー(時間)を確保できない昨今では、やりたいことがあってもやり切れない、ということ起きているのが実情ではないだろうか。

 例えば、年間1800時間働く社員が10人いる職場であれば、合計の1万8000時間の配分を考える必要がある。重要なことは、不要不急な業務を廃止・削減して、中長期的な課題を解決するための時間を確保することだ。このように今のリソース(この例の場合は社員10人)を前提として、時間という資源を最大活用していくマネジメントが必要であろう。

(3)職場・業務特性に合わせた改革推進

 会議や資料の削減などの一律のアプローチだけではなく、職場・業務特性を踏まえた働き方改革の実現を進めていく必要があるが、そのためには、改革をリードする部門(主管部門)と現場が連携・連動することが不可欠だ。

 ポイントは、現場が積極的に発信をすること。先ほどのデスクトップPCをキャリーケースで運んでいるような事例を発信し、主管部門が実態を把握できるようにしなければ、職場や業務特性に合わせた改革推進はできない。このような改革推進こそが自社流の働き方改革につながるのではないだろうか。