■会議・資料削減などのワークスタイル改革施策の実施

 ペーパーレス化などを、社長の「鶴の一声」ならぬ「神の一言」をきっかけにスタートする企業もよくある。このようなワークスタイルに関する改革は定期的にブームが訪れるが、そのたびに社員は会議時間の削減やペーパーレス化などを会社から言われ続けるので、やらされ感が漂ってしまう。

 また、会社は会議時間削減が有効と考えて施策を展開するが、従業員側は「チャットで連絡が取れるようにすることの方が有効と思っている」などのように、会社と従業員との間にギャップが生じることもある。

 実際、こうした状態を放置したまま、会社側は会議時間削減の成果を求めるため、現場では「やっていないとは言いにくいため、格好をつけるためにやったように見せた報告をあげている」という声も聞かれる。

 このように会社としての目的が果たされないまま、表面的に新しい取り組みをしても誰にとっても益はないのは、言うまでもない。

■テレワークの推進

 あるメーカーでは、トップダウンで、テレワークを推進しろという働き掛けがあった。

 しかし、技術職・開発職のスタッフなどには、CADなどのハイスペックなPCで処理が必要な作業がある。これらの作業はノートパソコンではなくハイスペックな会社のデスクトップPCを利用して業務をしていたわけで、テレワークのためにそのPCを家に持ち帰るという事態になった。

 自家用車が使えない社員はスーツケースにPCを入れて都心の本社から郊外の自宅まで電車で運んだという。こうした、なんともばからしい事例が世の中には多く転がっている。

 このように実態に沿わない施策や現実的な具体策が伴わない場合など、トップダウンの号令だけでは、なかなかうまくいかないというのが実情だ。