(1)成長戦略と働き方改革の関係を明確にする

 例えば、成長戦略を支える組織文化をつくり上げるために、ネットフリックス(Netflix)ではCulture BookやCulture Codeなどを作成し、思考・行動の在り方を浸透させている。良い働き方が従業員一人一人の力を発揮する源であり、競争力を高める要因だと考えているからである。このように働き方改革と成長戦略の関係を明確にすることが経営には求められる。

(2)成長戦略そのものの考え方を転換する

 ある運輸サービス会社では、「すべての顧客に最大のサービスを」という戦略から「勝負すべき顧客に自社らしい価値を」という考え方に成長戦略を転換させた。具体的には、高い輸送品質(遅れずに壊れないように丁寧に運ぶ)という自社の強みに共感してくれる荷主を主の顧客とし、価格だけを重視する荷主とは現行の基本契約を解約をしたのだ。

 これは自社の特徴を際立たせ、他社との差別化をすることを重視し、全方位に成長する戦略から考え方を大きく転換した事例といえるだろう。

(3)組織は戦略に従う一辺倒から、戦略は組織に従うという視点とのバランスをとる

「組織は戦略に従う」というチャンドラーの考え方が、長らく組織づくりの基本であった。しかし、働き方改革によって人的リソースが限られる中では、人が少ないがために戦略を実行し切れないことも考えられる。つまり、アンゾフが唱える「戦略は組織によって規定される」という企業内部の資源に着目するリソース・ベースド・ビューの考え方も必要となってくると考えられる。

 この話は経営学の中でもさまざまな議論が行われており、どちらが正解と決まっているわけではない。ただし、働き方改革を進めるのであれば、リソース・ベースト・ビューの考え方を理解しておく必要性が高いのではないだろうか。

 また、経営環境変化が激しい中では、戦略を考えてから組織をつくるというスピード感では限界が出てくるだろう。コロナ禍でも従業員一人一人が考え、すぐに行動を起こしていった企業ほど対応が早かったのは明らかである。日々の体験の中から気付き・発案したことを、組織課題として取り組むことができる組織づくりこそが重要である。