(1)重要なEX(Core EX)の明確化

 EXとは、「従業員一人一人にとって良い体験を実現することが、個人の成長につながる。結果として企業の成長も実現する」という考え方だ。

 そのため、従業員一人一人にとって、日常の中でのどのような体験が重要なのか、逆にどのような体験はしたくないと思っているのかを洗い出し、組織に共通する重要な体験(Core EX)を明らかにしていく。

(2)Core EX起点での全社の制度改革

 Core EXを踏まえて、重要な体験ができるようなアクションを職場で取り組むだけではない。経営理念・ビジョン、組織の在り方、各種制度、人材育成など全社的な各制度もCore EX起点で改革することで、従業員一人一人の体験価値を高めていくのがポイントだ。実際に、社員に対する意識調査にEX視点の項目したり導入や、EX向上に取り組む企業も増え始めている。

(3)本人のやりがいを重視する業務改革

 従来の業務改革は、「経営成果」のために効率化を図ることが重要だった。しかし、考えてみてほしい。業務を遂行しているのは機械ではなく人間なのである。その業務をやっていて「おもしろい・楽しい・成長に役立つ」などの「本人のやりがい」が高いほどパフォーマンスが高くなるはずだ。

 ある情報サービス企業では、業務の評価の視点の中に「本人のやりがい」を盛り込み、「従業員一人一人が今の仕事をやりがいの高い業務につくり変える」というアプローチをとった。その結果、従業員一人一人の業務の体験価値を高めることができ、従来の業務を大きく刷新できたのである。

 ここまで、働き方改革によるジレンマを放置することの課題とその解決方向を考えてきた。この記事をきっかけに、現在の自社の働き方改革を見つめ直すきっかけにしてもらいたい。

蛭田 潤(ひるた じゅん)


経営コンサルティング事業本部 CX・EXデザインセンター
シニア・コンサルタント

入社以来、CS・ES&働きがい向上や業務改革を目的とした全社活動支援のコンサルティングに積極的に取り組む。CS向上と業務効率向上の同時実現による事業競争力向上を目指して、営業・コンタクトセンター・アフターサービスなどの顧客接点部門の業務改革・人材育成に取り組んでいる。特に一人一人の意識・行動革新を促進し、企業文化・組織風土改革を実現するコンサルテーションに数多くの実績がある。