“視線をとらえる技術”に多様な業界が熱視線を送る

ヒトが無意識に向ける視線の位置情報を3D感知

森川 直樹/2020.10.20

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 すると藤森氏は「こんなものもあるんですよ」と言ってPC画面上にアルファベット26文字が並ぶパネルを表示させた。そして「GazeSense」を接続した市販のカメラをつなぐと、自らの視線の動きで文字を打ち込み始めた。対面する人間同士で、瞬きの回数などに意味を持たせ、そのルールを用いながらコミュニケーションを行う手法は昔から存在していたが、このデジタル技術によって、まさに「目は口ほどにものを言う」ようになったのだ。

あらゆるモノがアイコンタクトで作動する時代がやってくる?

岡部氏は、価格がリーズナブルでなおかつハードウエア込みの機器ではない点も「GazeSense」のメリットだと主張する。

「例えば特殊仕様のカメラやゴーグルでなければこの機能を使えず、内蔵されたプログラムがブラックボックス化されていたら、その汎用性は限られたものになります。でもEyeware Tech社はあえてSDKという形で提供しています。当然、価格は安くなりますし、先ほどご紹介したような様々な活用場面にも、すんなり導入していくことができます」(岡部氏)

「用途に応じて、ソフトウエアへの組み込みや追加開発などの必要はあるものの、むしろ使う側にとってはそのほうが自由に可能性を引き出していけます」(藤森氏)

「市販されている3Dカメラにつなぐだけで奥行きまで感知できるのですから、人間の目の能力に極めて近い。例えばヒト型の対面コミュニケーション用ロボットの目というかカメラに『GazeSense』を導入したら、ちょっと革命的なことが起きますよ(笑)」(岡部氏)

対話の中で「これを見て」や「あそこにあるあれを取ってきて」というように、「あれ、それ、これ」といった指示代名詞を用いても、今までのロボットは理解できなかった。しかし岡部氏がいうように「GazeSense」を搭載したロボットならば、人間の側が「これ」と呼んだモノを見ながら話せば、その視線から感知して理解できる。従来よりも簡単に、自然な言語感覚でロボットと意思疎通できるというわけだ。

事は「ロボット×GazeSense」だけにとどまらない。「AI×GazeSense」「VR×GazeSense」というように、他のデジタル技術との掛け合わせも始まれば、可能性はどんどん膨らんでいく。「AIスピーカーに話しかける」などという動作が、古き懐かしき光景となる日も遠くないかもしれない。あらゆる産業で利用され、あらゆる生活場面に活用され、「すべてのモノがアイコンタクトで動く」時代が来ても、不思議はないのだ。