ここまでの3社のインタビューからは以下の3点が浮かび上がってくる。

・リアルな対面営業からオンライン営業に全部ではないにしろ移行せざるを得ない

・オンライン営業では新規案件創出の難易度が高まった

・オンライン営業では相手の反応が読みづらく、求められるスキルが変わってきた

 いずれも「変わってきた」「難しい」という率直な認識である。

 しかし、顧客接点を担う主役である営業としては、嘆いてばかりもいられない。われわれは「変革が進まなかった営業部門がついに速く・大胆に変わらざるを得ないときがきた」と考えている。言い古された表現ではあるがまさに「ピンチをチャンスに」であるし「攻撃(変革)は最大の防御」である。

 最後にこのような環境の中で積極的に営業変革を進めている企業のインタビュー内容を紹介して終わりたい。

ITカンパニー会社D

 私たちは、このコロナの状況を変革のチャンスと捉えている。これまで徐々に進めてきたホームページ上のバーチャル展示がここにきて注目を集めてきた。確かに売上げは減ったが、それでも新規問い合わせはある。さらに、MA(マーケティングオートメーション)ツールを導入してきたことも良かった。バーチャル展示からお客さまのWeb上の行動をトラッキングすることで、お客さまの購買意欲が把握できた。そこにオンライン営業を仕掛けることで逆にコミュニケーション質が上がってきたと感じている。

 確かに大変な時期ではあるが、これを機にこれまで進めてきた営業部門の変革を一気に浸透させ、進めていきたい。

変曲点を生かし切る営業の新しい時代

 紹介した企業の取り組みはまさに変曲点を的確に生かし切るための試行錯誤であると言える。変曲点に対して受け身の対応だけでは乗り切ることはできず、流されてしまう。営業は「変わる顧客」「変わる環境」「変わる競合」と向き合うことがミッションであり、変曲点を捉え、変化を主体的に創り出すことが求められる。

 弊社では今後も営業領域にかかわらずさまざまな事例や実態を変曲点を生かし切るヒントとしてご紹介したい。

コンサルタント 坂田英之(さかた ひでゆき)

株式会社日本能率協会コンサルティング
経営コンサルティング事業本部 CX・EXデザインセンター
チーフ・コンサルタント

1991年日本能率協会コンサルティング入社。製造業、サービス業、情報 ・通信産業などのマーケティングおよび営業競争力革新を専門領域とする。営業マネジメントシステム開発、セールススキル評価および強化、営業部門情報武装化(SFA) 支援、ソリューション営業実践支援などのコンサルティングの経験を有する。