組織連携による生産性向上余地は大きい

 それでも“売場内”だけの取組では限界があります。生産性向上を進めていく上ではさらに部門内、部門間にも目を向けていく必要があります。

 “部門内”での取組として、デリカ部門では複数店舗分の惣菜を、鮮魚部門では複数店舗分の寿司を1店舗でつくる体制に見直し、従来の人員でより多くの商品を供給できる体制を築いています。

 “部門間”の取組も積極的です。市場の買付で旬で安価な商材をみつけた鮮魚部門や青果部門の課長からデリカ部門の課長に購入確認の連絡が入ります。そして当日に安く大量に仕入れた旬の茄子が、各店のデリカ部門で、天ぷら、マーボ茄子、焼き茄子に美味しく調理され完売します。従来は仕入れで対応していたトンカツは、畜産部門に協力のもと、肉を筋切りしてデリカ部門に渡してもらうようにしました。デリカ部門ではパン粉をつけて調理するだけですが、出来立ての商品が売場に並び完売します。こうした部門連係による手作り商品の粗利は断トツです。

 とはいえ、「個店経営型」のスタイルが強いと、一気に全社で進めるといった取り組みに時間がかかるのが正直なところです。小規模スーパー、とりわけ地方の小規模スーパーにとってこれから厳しくなってくる人員不足と戦っていくためには、これまでの「個店経営型」の良さは維持しつつ、売場内・部門内・部門間・店舗間の連携で付加価値をつくりだす新たなモデルづくりが求められます。

(第3回に続きます)

◎寺川 正浩(てらかわ・まさひろ)
日本能率協会コンサルティング ビジネスプロセスデザインセンター チーフ・コンサルタント
1997年 JMAC入社。専門はマーケティング・営業領域。戦略策定から、戦略を実現するための業務プロセスの設計、KPIを活用したマネジメントの仕組みづくりを経て、実施・定着化までの一貫したコンサルティングを行う。小売・サービス業、食品メーカー、アパレルメーカー、医薬品メーカーなど幅広い範囲を支援。著書に「トップのための経営講座 国内成熟市場で伸びる営業・マーケティング戦略」(商工中金経済研究所)、『実務入門 「仮説」の作り方・活かし方』『実務入門 営業計画の立て方・つくり方』(いずれも日本能率協会マネジメントセンター/共著)、「サービスプロセス改善事例集2010」(日経BP寄稿)、ほか多数。JMACサイトでもコラムを執筆。