しかし部門によっても様々です。「個店経営型」の色が強くなればなるほど、知恵の共有がなかなか進みません。第1回(「逆風に挑む!地方小規模スーパーが見える化したこと」https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/60446)で紹介した刺身だけで鮮魚部門売上の半分以上を稼いでいる店舗の主任に、刺身はどういう工夫をしているか問うと「他の主任には教えないでください」と念押しされました。外部の人間には教えないのではなく社内の人間には教えないというのだから、驚きます。極端な例ではありますが、A社の場合だと水産部門は特に職人気質のスタッフが多く、技術や工夫を共有しましょうと言ったところでなかなか出てくるものではありません。

 そんな「個人経営型」の色が強い部門でも、自分の店舗で後輩を育てるというアプローチは良かったようです。技術を伝承してほしい主任の下に若手をつけて、育成計画を立案してもらい、本社がフォローもしながらOJTを実行しています。もともとは「人材育成」という全く違う観点からの取組でしたが、これが結果的にノウハウの伝承になり、ナレッジ共有に繋がっていきます。堅物な人が多いのですんなりとはいきませんが、指導を受ける側は着実に育っているようです。彼らからすると「後輩育成」と「ノウハウ・ナレッジ共有」とはちょっと違うようです。これはこれでなんとも人間味が漂っています。

 どの業界でも同じですが、人に仕事がついてしまうと、異動や退職でお客様も離れていきます。A社も同様でこれについては半ば諦めていましたが、ノウハウ・ナレッジの共有が進めば大きく解消されると期待しています。

地方スーパーに生産性向上の取組は不可欠

 さて、地方のスーパーでとりわけ深刻化していく人員不足への対策の1つとして店舗マネジメントの取組について述べさせていただきました。もう1つ、「生産性向上」のA社の取組を紹介します。