人員不足への対応としては、これまで10人でやっていた仕事を8人でやるための努力をしていかないといけません。人口減少率が激しいこのエリアでは永遠のテーマでもあります。

 スチームコンベクションを各店のデリカ部門に導入するなどして設備投資にて人手不足を補うことは行いつつ、仕事の手順や業務の見直しを進めていきました。自部門の業務の棚卸を行い誰がどういう業務を行っているかの業務の見える化をすることで改善の意識は芽生えます。精肉部門であれば同じパート社員でも手切り、スライサー、たたき、盛り付け等すべてをこなしている店舗と、特定工程しかできないパート社員が多い店舗とはっきりしました。スタッフの高齢化も進んでいる地方スーパーは身体上の理由で実質難しいケースも確かに多いのですが、方針としては全店多能工化をすすめていっています。

 売上をあげる工夫は10店舗が10種類のやり方でこれまで通り取り組むことで良いのですが、効率を高めるにはこれまでの「個店経営型」で各店に任せたところでメリットはなく、「チェーンストア型」で本社が統制・フォローしていかねばなりません。

 小売業での生産性向上を進める上で要員管理(シフティング)は必須です。仕事量のピークオフにあわせたシフトを組むことです。A社においてもシフトだけみると午前中にスタッフが集中していて、午後からスタッフが少ない店舗が目立ちます。来店客が多い昼と夕方にターゲットを当てたシフトに組み替えましょう、と理屈上はなるのですが、現実的にはそう簡単にはいきません。もともと時間の制約があるからこそパートで働いてもらっている方々が多いわけで、予想通りシフト変更をできたのはわずか1件だけでした。無理して時間を変更してもらって結果ワークライフバランスが崩れて長続きしないことのほうが会社にとってはリスクです。

 そこで、細かく業務の見直し余地がないかをチェックしていきました。ある店舗のデリカ売場ではパートの方々の退社時間が早い関係から15時からは清掃を開始しなければならず、結果、夕方向けの出来立ての商品を作ることができていませんでした。しかし、仕事のプロセスを確認していくとお昼の客数が落ち着いた時間帯に比較的余裕があることがわかり、思い切って13~14時におおよその清掃を済ませて、その後夕方向けの出来立て商品を可能な限り調理するオペレーションに変更してみました。その結果、シフトは従来と変えない中で、夕方にも出来立ての惣菜が充分ではないものの並ぶようになりました。もちろんその分売上もあがりました。