800人のコミュニティーが社内へもたらした「やりがい」
社内には当プログラムの「サポーター制度」があり、現在199名が登録している。オンラインのコミュニティには800名近くが登録していて、関わり方は人によりさまざま。
サポーターは各々の持つ専門性を用いて、手伝えることがあれば手伝う。組織のかたちはいわゆるヒエラルキー型ではなく、グラデーション状にしていて、関わるメンバーやタイミングによって関与度が変動することを意識しているのだとか。
「本業や子育て、介護などが忙しくなったら各自の判断で関与度を上げ下げできるなど、グラデーションがある状態が理想です。それならサポーターとして参加しやすくなると考えています」(小笠原氏)
また、リコーには「社内副業制度」があり、稼働時間の20%までは社内の他部門の仕事を自分の仕事として受けられる。当プログラムへの参加も社内副業として認められる。
「当初はアクセラレーター・プログラムそのものを含め社内から、実効性に対するネガティブな反応もありました。しかし実際に参加してもらうと、本業とは違う場面で専門性を活かせて経験が積めるため、やりがいを感じて賛同してくれる人が増えていきました。
年齢層も幅広く集まり、挑戦した人が相互にコミュニケーションを密に取り合っていて、コミュニティのベースは創れました。参加者はみな楽しそうで、人と人が出会うことで何かが生まれることに価値を感じています」(大越氏)
プログラムのサポーター制度やコミュニティでの活動を通じて、社内の活性化にも一役買っているというわけだ。
自社アセットとの関連性は問わず、内発的動機を重視する
まだまだ産声を上げたばかりの統合プログラム。今後の課題は「数え切れないほどある」そうだ。
「サポーター同士の交流をもっと活性化したいです。また、情熱の鮮度管理が今後の課題ですね。登録時と、時間が経ってからの意気込みに温度差が生まれてしまうことがあるので、どう保っていくかを考える必要があります。
あとは、私たちの取り組みの認知度を社内でどう上げるかも課題です。社内のデジタルサイネージや社内報などで徐々に広報していますが、知らない方もまだまだ多い。
また、人事制度が個社ごとに異なっている部分があり、組織の垣根を乗り越えて変えていく必要があります」(小笠原氏)
当プログラムにKPIなどの指標の設定はなく、また経営層への説明責任もないのだとか。むしろその柔軟さを保つことで、新しいものを生みだす空気を保っているようだ。
ただし定性的なアンケートは取っていて「リコーの文化が変わるかどうか」の質問に対し回答者の20%が「もう変わっている」と答えたという。それだけ変化を感じている社員が多いようだ。
当プログラムでは必ずしもリコーのリソースやアセットの活用を必須としていない。縛りをなくすことで自由な発想が生まれる可能性を高めているのだ。各々の内発的動機、何がしたいのかが重視されている。
さまざまな部署にいるスペシャリストが、現状とは異なるカタチで社外の人と組み合う。その偶然性によって化学反応が起こり、いい関係が生まれることを期待している。
始まったばかりで「一段ずつ階段を登るように」、進めている事務局のメンバーたち。これからどんなイノベーションを起こしていくのか、楽しみである。