技術環境の拡充、制度改革、意識変革の同時進行により、数字に表れた多大な成果

 2017年ごろに本格化した「社員各自がテレワークを体験する」という施策は、徐々にその頻度と対象範囲を拡大していった。「アフラックWork SMART」は、性別や年齢に関係なく幅広い社員たちから支持の声が上がり始めたという。

髙代氏 テレワークというと一般的に子育て中や介護中の社員の利用をイメージしますが、当社では属性に関係なく多くの社員が積極的にテレワークに取り組んでくれています。アフラックの取り組みがさまざまな賞をいただけたのは、属性にこだわらずに全社員を対象にしながら進めていった点が、特に評価されたのではないかと思っています。

 こうなれば当然、推進側の両氏がやるべきことも増えていく。

亀岡氏 在宅勤務の局面で基本となるのはセキュリティ対策を万全に施した端末です。テレワークに積極的に取り組む社員や部署が増えていく過程で、端末の増設が急務になっていきました。現在では社員5人に1台という割合で端末が行き渡っている状況ですが、今後さらに増やしていく計画もあります。またサテライトオフィスについても現在では全国の主要拠点に9カ所設置しています。ここでも技術部門との連動で万全なインフラを整えています。

 制度面でも急速に改革が進んだ。「所定外労働時間の削減」、「有給休暇取得率の向上」、「配偶者出産休暇の取得推進」「男性育休の取得推進」「年1回以上のテレワーク実施」という5つのKPIのもと、フレックス制度やシフト勤務等の制度に改善を加えたという。その結果は推進側の2人の期待をさらに超えるものだった。

髙代氏 例えば所定外労働時間の平均値は2015年以降、ずっと前年比10%以上のペースで減り続け、2018年においても対前年比12.2%の削減を達成しました。年次有給休暇の取得率も2016年までは60〜70%ほどでしたが、2018年には平均取得率83%にまで上がっています。そして配偶者出産休暇取得率とテレワーク実施率についても目標を達成しています。

「まず経営層から取り組む」という精神も具体策に結び付いている。管理職向けのタイムマネジメント研修や、eラーニングやイクボスセミナーを実施。ワークライフバランスの充実と生産性の向上を、チームで実現していくための発想やノウハウを学び続けている。

亀岡氏 最初から全ての社員や管理職がテレワーク、あるいは働き方に関する制度改革などについて前向きだったわけではありません。「会社の方針には共感するけれども、私の仕事はテレワークでは不可能なのでは」と言う社員もいました。

髙代氏 「在宅勤務の部下が本当にちゃんと仕事をしてくれているのか不安になる」と漏らす管理職もいましたね。そういった意見も、よくわかります(笑)。そのためにも、研修などを設定していきましたし、われわれとしても周知活動の一環として社内メディアによるテレワーク事例の情報発信を続けてもいます。

テレワークが生み出したポジティブな変化の数々

 実は亀岡氏自身も、かつてモバイルワークの有効性を実感した経験があるのだという。

亀岡氏 例えば、札幌の拠点で営業をする場合、他エリアと同様にビジネスパートナーである代理店と定期的に会議をするのがルーティンとなっています。ただ、遠方にある代理店に行く場合、札幌から片道で2時間もかかるケースもあり、そこに週3回通うだけで移動に時間がかかってしまいます。ですが、3回のうち1回だけでもWeb会議にすることで、移動に充てていた時間を別業務の対応に充てることが可能になります。実際にWeb会議システムを代理店にも導入してみたところ、問題なく意見のやりとりや情報共有が可能になるだけでなく、普段なかなか顔を出すことができなかった他代理店とのコミュニケーションに時間を充てられているようです。アフラックのテレワークについての取り組みが成果を上げているのは、このように「やってみたら、期待していた以上に効果があった」からだと確信しています。

髙代氏 一方で「営業部門はモバイルワークがしやすく、効果も上がりそうだけど、私たち契約事務部門ではテレワークが難しいのでは」という懸念もありましたよね。

亀岡氏 そうですね。保険という事業ではお客様の大切な個人情報をお預かりしています。ですから、お客様の給付請求や保全手続きを行う契約事務部門などではセキュリティに対する問題意識は大きいですし、テレワーク絡みでシステムやデバイスを改革していく時にも、この点には最大限の神経を配りました。

髙代氏 でも、ある部門ではテレワークがきっかけになってペーパーレスへの取り組みが加速しました。今まで「紙じゃなければ無理」だと思い込んでいたものの、ペーパーレスにトライしてみたらむしろ作業スピードや効率の面だけでなくセキュリティ面でも有効だということが分かりました。

 こうして、「やってみよう」の精神によるトライと、実行を通じた発見から複数の部門がその有効性に気づき、オーナーシップを持って自走し始めてもいるとのこと。両氏は口をそろえて語る。「こうしてダイバーシティ推進部主導だった活動が、各部門の主体的改革へと移行している現状が最良の成果」なのだと。数字だけでは見えてこないテレワークの波及効果は他にもあるようだ。

亀岡氏 最近になって試験的に導入を始めたのがOriHimeという分身ロボットです。アフラックでは全国の拠点から社員が集まって研修会を開く機会があり、そこでも育児などを理由に参加できない社員に対しWeb会議システムなどを活用していたのですが、会場に来られなかった参加者の存在感はどうしても希薄になりがちで、実際に会場で参加している人とは温度差がありました。「じゃあ、電話やPCではなくロボットを置いて、その人の代わりに参加させてみてはどうか」というアイデアが出てきました。

髙代氏 笑い話で済ませてしまう企業もあるのかもしれませんが、ここでも「やってみよう」という社風が後押しし、現在、育児中などを理由により研修会場までの異動が困難なケースなどにおいて試験的に導入を始めました。

 単にその場に「分身」がいる、ということだけではない。ロボットがうなずいたり、挙手などの動作をしたりして、遠隔地にいる当人の声を発するため、議論の場に参加しているという存在感や搭載しているカメラによって得られる映像情報量の多さなども好評だという。さらにテレワークの浸透は本社と拠点との間にあった垣根をも乗り越えた新たな可能性も示しているとのこと。

亀岡氏 今、特に注目しているのは、社員のキャリア形成や人材採用での可能性の広がりです。例えば地方拠点ならではの仕事にやりがいを感じている社員であっても、東京に転勤することなく本社業務を担えるテレワーク環境が整えば、自身が望む将来設計やキャリアパスに選択肢を増やすことが可能になります。これから新卒で入社しようという全国の学生が、地元にいながらでも本社や各地の仕事に携わることができれば、当人のライフプランも自由に広がりますし、採用する側としてもより多くの方にチャンスを提供していくことが可能と考えています。

 今後、多くの大企業がアフラック並みのテレワークを浸透させることができたなら、日本における働き方やキャリア形成のあり方までもが大きく変わるかもしれない。「場所と時間の制約から自由になる働き方=テレワーク」には、社会や概念の常識を覆すような可能性も秘められているのである。では、それほどまでのポジティブな可能性を引き出すにはどうすれば良いのか? 高代氏は最後にこう語った。

髙代氏 それぞれの企業にさまざまな制約や事情があると思いますが、やっぱり重要なのは「やってみる」ことの意義をトップも現場も持ち合わせることではないでしょうか。「あれこれ不安な点を議論している時間があったらやってみて、失敗したらそこから改善点を見つけて再チャレンジする」というアプローチで取り組んでいます。今後も私たちは「やらない理由」を探す前に「やってみる」スタイルで、ダイバーシティやアフラックWork SMARTを進めていきたいと思います。