デジタルで既存資産を活用し未来を作る

IT企業から製造業に転身したデジタル推進役の挑戦

CDO Club Japan/2019.8.13

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――組織の中でデジタル変革を進めるために重要なことはなんでしょうか?

 一番に挙げるならリーダーシップだと思います。全社的なプラットフォームを水平的に構築したとしても、そのプラットフォームに事業や業務がからみ合わないと、デジタルを使った有効な変革はできません。極論すれば、事業部長がCDOぐらいの素養を持っているといいなと思います。本当にデジタル変革をしようと思えば、事業部長はCDOの素養50と事業の素養50ぐらいでないといけないかもしれません。

――デジタル変革のためには、社内の意識改革や人材育成も必要ではないでしょうか。

 大きい組織の中に長くいると、どうしても組織文化が根付いてしまいます。社内だけで新しいことを考えるのは限界があるかもしれません。オープンイノベーションのように協業するところまでいかなくても、外部の知見を入れる、外部のソリューションを使う、外部とのコミュニケーションを増やし世界の中でのヤマハ発動機の姿を認識する、ということも必要でしょう。

 優秀なデータサイエンティストはほしいところですが、そう簡単に採用できません。高給なデータサイエンティストでなくても、課題を解くためのスキルにフォーカスするのであれば、社内で育成できるだろうということで、知り合いのデータ分析会社にヤマハ専用のトレーニングカリキュラムを作ってもらいました。1カ月カンヅメになって、1日8時間、宿題が毎日出て最後は卒業試験もある、というかなりハードな内容です。

 それによって、自分たちのビジネスに必要な技術習得ならばかなりできることがわかりました。去年実施した初めての受講者は15人。好評を博して今年は2倍以上の応募がありました。いまちょうどトレーニングをやっているところです。その人たちが生産現場に戻って、データ解析や需要予測に生かす、ということができつつあります。

本当の意味のストラテジストが必要

 もう一つ結構大きな課題と感じているのは、ストラテジスト(戦略家)がほしいということです。企業ではよく「戦略」という言葉が使われますが、本当に戦略なのか、ということです。

 日本企業全体に言える一般論ですが、問題解決型の優秀な人は非常に多いですし、問題解決のためのフレームワークはたくさんあります。だが、戦略思考に基づいた投資や思い切ったリスクテイクということになると、日本企業は弱い面があります。問題を解決してもビジネスが伸びるかどうかはわかりません。というのは、環境がガラッと変わる可能性があるからです。環境やテクノロジーの変革点を見極め、破壊的なテクノロジーを使いながらいかに新しいビジネスを考えるか、これは非常に重要です。