デジタルで既存資産を活用し未来を作る

IT企業から製造業に転身したデジタル推進役の挑戦

CDO Club Japan/2019.8.13

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レガシーは資産に変えられる

――それでも大きい会社で方向性を変えていくのは難しいのではないでしょうか。

 やはり会社の歴史があるので、レガシーのイナーシャ(慣性)が重いと感じるときはあります。ただ、レガシーはコンピュータ用語だとネガティブなニュアンスがありますが、本来レガシーは悪い意味ではありません。レガシー(遺産)をアセット(資産)に変えることもできるはずです。

 たとえばバイクづくりはスタートアップが一朝一夕でマネできるものではありませんし、売上ベースで世界トップレベルのポジションも持っています。これを有効活用しない手はありません。そこにデジタルやデータの技術を入れれば、もっと事業を伸ばせるでしょう。

 ヤマハのバイクは年間に500数十万台を販売しています。平均で10年間保有するとすれば、ヤマハの愛用者が世界に5000万人以上の顧客がいることになります。

 弊社に限らず自動車業界では、ディーラーが顧客情報を持っている一方で、メーカーはお客さんとのつながりをあまり持っていません。しかし世の中には5000万人以上のヤマハの愛用者が実際にいるわけです。その人々とダイレクトにつながれば、アフターセールスやサービス提供のビジネスができるはずです。バイクを仕事に使っている人もいっぱいいるので、そういう人たちを組織化して新しいビジネスを始めるとか、いろいろな展開が考えられます。これはまさにトップラインに効いてくることです。こういうことはやりたいなと、いろいろと画策しています。

 手始めに、去年から徐々に顧客IDの管理を始めました。グローバルでお客さんにユニークIDを付与します。ヤマハ製品に興味を持ってもらったときからずっとそのIDで管理できるようになります。


 ただ、デジタルで新しいビジネスをするにはマーケティングも強化する必要があります。弊社に限らず日本の製造業は総じてマーケティングが弱い面があります。私が以前にいたインテルは技術の会社ではあるけど、マーケティング力もけっこうあったので、余計にそう感じます。

 ものを作る一方で、価値も作り出すということです。その価値を伝えること、コミュニケーションをとることも非常に重要です。その一連のプロセスがきちんとできているのかどうか、見直す必要があるかもしれません。