デジタルで既存資産を活用し未来を作る

IT企業から製造業に転身したデジタル推進役の挑戦

CDO Club Japan/2019.8.13

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 海外拠点に視察に行かせてもらって気づいたことがあります。ヤマハ発動機は海外売上が90%というグローバル企業で、海外に子会社が90社以上あります。ただ、歴史が長い分、各拠点が個別に成長してきた面があります。また本社も事業部ごとに部分最適化されている傾向があります。現時点で見るなら、グローバルとか全体最適という観点の検討も必要ではないかと思ったのです。全体最適も考えないと、グローバルの競争に勝っていけないでしょう。

 当初はERP(統合企業情報システム)などを使ったグローバルの基幹システムの構築を考えました。ただ、IT主導で基盤を作ったとしても、それだけで事業本部や生産機能本部がうまく使ってくれるかというのが非常に疑問でした。先進的なテクノロジーのプラットフォームを導入したとしても、それを実ビジネスや実業務にどう使っていくかということの方がもっと重要です。

「IT基盤」ではなく「経営とIT」のデザインに

 結局社長を含む全役員に、経営としてどうありたいかというのを一対一で聞いていくことにしました。2030年にビジネスがどうありたいか。経営手法やオペレーションモデルをどうするのがいいか。生産方式はグローバル最適と拠点最適のどちらがいいのか、というようなことです。

 そうするとみなさん、もう少しグローバル化したい、迅速に経営データにアクセスしたいということでした。2030年に向けて今のままでは厳しいという見方はみなさん共通だったので、ではこうしたらどうですかという話を始めました。その結果、当初考えたような「IT統合基盤」ではなく、「経営とITのグランドデザイン」を作ることにしたのです。まず経営のグランドデザインを固めて、それをサポートするIT基盤を作る、というスタンスです。

 このため、グランドデザインはERPの導入だけではなく、エントトゥーエンドのSCM(サプライチェーン・マネジメント)、MBSE(Model Based Systems Engineering)による製品設計などトータルPLM(Product Life cycle Management)、生産系・工場系のMES(Manufacturing Execution System)、スマートファクトリー、販売後の情報取得/サービス提供のコネクテッドビークル、販売強化のデジタルマーケティング、データ分析などをすべてカバーしています。

 グランドデザインは2018年末に作り上げました。あわせて、会長と社長、各事業本部と生産機能本部の役員全員に集まってもらい、2回合宿をしました。経営の方向性を決めてもらうためです。いくらCIOやCDOがいても、会社としてどうするかという腹決めなくしてはなかなか動きませんから。