SalesTechが解決する3つの課題
それでは、具体的なアプローチ方法やツールについて見ていこう。「営業活動を支援するテクノロジー」というと非常に広範にわたるが、本記事では「SalesTech」 の定義を「スマートデバイスやAIの適用などにより、営業活動の特定領域を従来よりもさらに効率化・強化するシステム/サービス(MAや、SFA/CRM、BI、LMSなどすでに普及しているプラットフォームは基本的に除く)」とする(※1)。
※1 ITR発行ホワイトペーパー『営業課題の解決に向けたSalesTechの考察』(2018年10月10日)より抜粋
同資料では解決すべき課題を以下の3つに大別し、存在する主なサービスの方向性を次のようにまとめている。
①営業活動の特定領域の効率化および管理
・見込み客を発掘するため、見込み客リストの整備や成約に繋がる可能性の評価(ターゲティング/スコアリング)
・潜在顧客へ適切なアプローチを行うことを目的とした、営業コンテンツの作成・更新や共有
・契約業務における見積りや請求管理など、煩雑かつ属人的になりがちな作業の効率化
②データ管理/予測分析
・AIを使い営業担当エリアの分析・最適化を行う等、複数の営業領域を横断して営業活動や顧客データの管理・分析を行う。SFAやCRMを含める場合はここに分類される
③人材育成
・短時間で利用できる学習コンテンツの導入(マイクロラーニング)
・訪問先や電話での顧客との会話内容の分析。それを基にした改善点のコーチング
ITRの調査結果では、「改善が必要とされる営業領域」のトップに「いつ、どのチャネル(メールやチャット、電話、Web会議、訪問など)を使って見込み顧客へアプローチするか」といった「適切なアプローチ」が挙げられている。同領域は海外のベンチャーキャピタル等からも盛んに資金調達が行われており、国内でも成長が見込まれる分野だ。
他にも、改善ニーズは高くないものの今後の注目領域として「契約支援」や「人材育成」なども挙げられている。具体的には、以下のようなサービスが注目を集めている。
①に分類される。営業に特化したWeb会議ツール「ベルフェイス」を展開。社内会議用のWeb会議システムと異なり、オンラインで訪問同等の商談を行える環境を提供していることが特徴。
オンライン商談により営業担当者が一カ月の間に使うといわれる、約52時間分もの移動時間をカット。また、同じオフィス内で商談を進められるため、複数人でスキルを共有することも可能となる。同システムはリリースから3年で約900社(2019年1月時点)の企業に導入されており、国内発の「SalesTech」サービスの中でもとりわけ存在感を放つ。
①に分類。契約作業をクラウド上で完結させることができる、電子契約サービス「クラウドサイン」を展開。契約書の補完・管理や、発注書・請書・納品書・検収書・請求書・領収書などの対外的なやり取りにも利用可能。
③に分類。メールはもちろん、電話やWeb会議等による音声通話等、営業担当者と顧客とのやり取りを一元管理できる「Gong」を展開。AIを用いたデータの分析結果をもとに、営業における対話スキルの向上を図ることができる。現状、日本でのサービス展開は行われていないが、米国で注目を集めている先進事例として紹介する。
営業職にとって必須スキルであり、同時に学びづらい能力でもある顧客との会話力。スキルの属人化を防ぎ、営業チーム全体の生産性を高める目的において、「Gong」は有用なサービスだろう。また、「音声感情解析技術」で国内外から高い評価を受ける「Empath」のようなスタートアップの存在からも、今後の国内での広がりを感じさせる分野ではないだろうか。