音声UIが覇権を握る日
既存のスマートスピーカーからだけでは、VUIの必然性は感じ辛いかもしれない。「使いこなせれば便利なのかもしれないが、生活必需品ではない」というのが大方の意見ではないだろうか。
しかし、見てきたように「ながら」作業が強いられる場面や、視覚からの情報収集が困難なユーザーにとって、VUIは多くの可能性を秘めている。
2018年2月13日にビデオリサーチが発表した「Senior+/ex(シニアプラスエクス)サマリーレポート」とオプションレポート「シニアとデジタル・コミュニケーション」に関するプレスリリースによれば、デジタル関連の調査はあらゆる項目において若年層のスコアがシニアを上回る傾向にあるものの、「スマホの音声検索機能の利用率」に関しては全く逆の傾向を示している。年齢が上がる毎に利用率も高まっており、18~34歳の利用率が5.8%であるのに対して70~74歳は15.7%と、3倍近い開きがある。
特定の知識を持つユーザーにしか使用できなかったCUIに比べれば、GUIは多くの人にとって視覚的・直感的に使用できるインターフェースだ。しかし、PCやスマートフォンに初めて触れた日のことを思い出せばわかるように、GUIも始めは基本操作や求める機能を呼び出す手順を学ぶ必要がある。ここに加齢による身体機能の衰えも加われば、GUIは「感覚的に使えるUI」とは言い難い。
これに対し、特別な入力の仕方を学ぶ必要もなく「声をかける」「会話する」という日常的に行っている動作のみで利用できるVUIはシニア層にとって、より取っつきやすいUIなのだろう。加えて、先述のKDDIの調査では、「人前で音声でインターネット検索をするのは恥ずかしい」かどうかという問いに「非常にそう思う」と答えた人の割合が最も少なかったのは、男女共に60代(同調査の対象者は15~69歳)。先進国の中でも深刻な少子高齢化問題を抱える日本では、シニア層からVUIが普及していくのかもしれない。
音声のみで行えることは限られており、VUIは万能ではない。例えば、音声検索によって読み上げられる結果は基本的に一件だけ。一覧性が無いため、PCやスマートフォンでの検索のように、複数提示された検索結果を自分で見比べて判断するといったことはできない。しかしそれでも、これまで見てきた通りVUIが相応しい場面は存在する。視覚的・触覚的なUIを補うものとして進化していくはずだ。あらゆる人が平等に、同じ質・量の情報を容易にやり取りできる手掛かりとなるUI。VUIを含め、今後の進化を見守りたい。