アメリカと欧州を参考にした教育を

 一番の課題は「教える側の教師をどう育てるか」であるが、そのために欧州とその周辺国の約40カ国が参加するネットワーク“Eurydice”を運営しており、教師が迷う場合はこのネットワークが威力を発揮すると言っていた。

 なお、この名称はギリシャ神話から取っているということだったが、その真意までははっきりしないようだった。おそらく、前を向いて後ろを振り向いてはいけないというくらいの意味ではなかろうか。

 少し意外だったのは、アメリカの起業力教育をそのまま取り入れているのかという質問に対して、もちろんアメリカのやり方は大いに参考にしているが、欧州各国で独自の教育方法を考案しているという回答だった。

 また、雇用創造という観点にも重点が置かれ、起業力教育を教育の世界と労働の世界の橋渡し的役割と捉える考え方にも、アメリカとのニュアンスの違いを感じた。

 このような欧州委員会の取り組みはまだまだ緒に就いたばかりで、Eurydiceレポートも2012年にごく小規模のものを作成してから、2016年に今回のような大々的なレポート*2を作成したばかりで、今後はさらに起業力教育の効果を見ていく必要があるということであった。

 日本としてもアメリカ流の起業力教育を師としつつも、このような欧州の取り組みをも参考としつつ、高校までの間に全生徒が一度は起業力教育を受ける体制を整えていくことが必要であると、ブリュッセルから帰ってあらためて考えた。

*2:前述の“Entrepreneurship Education at School in Europe”レポート。