1年ちょっとで量子ビット数の向上が急加速

 量子コンピュータ分野での最近の話題は、この1年ちょっとの間に集積度が驚異的に向上したことである。

 現在、Google、Intel、IBM、MicrosoftといったIT業界の巨人に加えて数多くのベンチャー企業が量子コンピュータの開発を行っている。量子コンピュータを実現するための技術は何種類かに大別できるが、2018年現在、技術的に最も開発が進んでいるハードウェアは、超伝導体を用いる方式である。

 超伝導体とは、ある温度以下で電気抵抗が0になる物質である。超伝導量子コンピュータは、10mK(ミリケルビン、ケルビンは絶対温度の単位で0Kが-273.15℃)という非常に低い温度で動作する。世界初の超伝導量子ビットは、1999年にNECの中村泰信(現東京大学・理化学研究所)と蔡兆申(現東京理科大学・理化学研究所)によって実現した。NECによる歴史的偉業の後、集積化に向けた研究が世界中で行われるようになった。

 1999年から18年を経た2017年4月における集積度の世界記録はGoogleの9量子ビットだった。ところが、2017年5月にIBMとIntelがともに17量子ビットの超伝導量子コンピュータを製造したことを皮切りに、50量子ビット(IBM)、49量子ビット(Intel)と発表が相次ぎ、2018年3月にはGoogleが72量子ビットの量子コンピュータを製造したと発表した。わずか1年で劇的な進歩があったのである*1

*1 ただし、実際に超伝導量子コンピュータの動作に成功しているのはIBM(20量子ビット)、Rigetti Computing(19量子ビット)、中国科学技術大学(12量子ビット)、Alibaba(11量子ビット)、Google(9量子ビット)だけである。2018年12月現在、Google、IBM、Intelは49~72量子ビット級の中規模量子コンピュータを評価中である。

Googleが2018年3月に発表した72量子ビットの量子コンピュータチップBristlecone(左)と量子ビットの模式図(右) 画像提供:Google

 ちなみに、2018年12月にはアメリカのベンチャー企業IonQが、超伝導体方式とは異なるイオントラップ方式で79量子ビットの量子コンピュータの実現に成功したと発表した。ただし量子コンピュータの動作に成功したのは現段階で11量子ビットまでである。

超伝導量子コンピュータの集積度の向上
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 それまでの超伝導量子コンピュータの量子ビット数(集積度)は上図の赤線で示すように指数関数的ではあるがゆっくりとした速度で成長していた。ところが2017年以降の集積度をプロットすると上図の青線のように急加速したことがわかる。Intel創業者の一人ゴードン・ムーアが、1965年に提唱した「半導体の集積度は18カ月で2倍になる」というのが「ムーアの法則」としてよく知られているが、量子コンピュータでも同様のことが言えそうだ。これは「量子版ムーアの法則」と呼べるだろう。

 極めて楽観的な予測ではあるが、もしこの新しいトレンド(図の青線)が順調に続くのであれば、2035年頃に100万量子ビット級の実用的な量子コンピュータが実現すると期待できる。