ここで考慮すべき第1のポイントは、オープンイノベーションの手法は多岐にわたっており、どれか1つの手法あるいは正解があるわけではないことである。

 たとえば、従来から活用されてきたコンソーシアムもオープンイノベーションの1つである。しかし、コンソーシアム型は技術の普及には向いているものの、研究テーマが基礎的な分野であることが多く、必ずしも事業化に向いていない。しかしながら、この点を理由にオープンイノベーションに躊躇しているならば、クラウドソーシングやライセンスインなどの別のタイプのオープンイノベーションを採用すればよいのである。必要ならば次々に切り替えていきながら、最適な手法を探索する懐の広さがオープンイノベーションにはある。

 第2に、達成すべきビジネスモデルの重要性である。経済学の観点からも経営学の観点からいっても、オープンとクローズのバランスが重要である。何でもかんでもオープンにすればいいというわけではない。

 では、どうバランスをとるのか。必要なのは、オープンイノベーションの原点に立ち返ることである。すなわち、オープンイノベーションとは、複雑かつ加速化する技術と市場環境にあって、社内外の知識を結合し収益性の高いビジネスモデルを確立することが本質である。したがって、知識集積のあり方をオープンにするか、クローズドにするかは達成すべき目的の手段にしかすぎない。

 一番重要な指標は、収益力の高いビジネスモデルを構築するために、どのような知識をどこからいかに早く導入できるかである。クローズドなモデルで調達できるのならばそれに越したことはないが、もしできないのならば外部から導入するしかない。そのバランスは、ひとえに構築したいビジネスモデルに依存しているのである。

 オープンイノベーションは魔法の杖ではない。むしろ、明確な目的意識があって初めて有効性を発揮する、新しいイノベーションの仕組みなのである。