知識が社外から社内へ流入するタイプは「インバウンド型オープンイノベーション」と、社内から社外へ流出するタイプは「アウトバウンド型オープンイノベーション」と呼ばれる。

 インバウンド型の例としては、一定額を支払うことによって技術の使用権を得るライセンスインや、使用権自体を購入するケースなどが挙げられ、日本企業はもちろんのこと、世界中の企業が数多く活用してきた。

 アウトバウンド型の例としては、自社が保有している技術を他企業にライセンスアウトしたり、販売したりするケースがあげられる。また、コラボレーションを通して、知識の流入と流出が同時に発生する場合がある。このような状況は「カップルド型オープンイノベーション」と呼ばれている。たとえば、オランダ企業のDSMが開発した基礎特許の使用権を東洋紡が取得し、東洋紡の開発した生産技術を今度はDSMが社内に取り込むというケースなどが見られる。

 もう1つの分類方法は、金銭的取引かどうかである。ライセンスや販売のように技術や知識の移動に伴って金銭が移動する場合と、クラウドソーシングあるいはフリーミアム、オープンソーシングと呼ばれるように、技術や知識の移動に金銭の移動が伴わない場合があるのである。

 以上の4種類の分類方法を整理したものが、下の図である。

オープンイノベーションの類型
出所:Dahlander and Gann, 2010, p.702より筆者修正。

 この分類法によると、ライセンスイン、ライセンスアウト、産学連携、共同研究、技術提携など、これまで日本企業にもなじみの深い多くの手法が、オープンイノベーションに含まれることになる。もちろん、インターネット上でのクラウドソーシングやソリューションの公募あるいは公開のイノベーションコンテストなど、近年インターネットの特徴をよりうまく活用して新しいイノベーションを誘発するような手法も数多く生まれてきている。

オープンイノベーションは魔法の杖ではない

 技術や市場の変化が激しい現代にあって、新たな技術や市場ニーズを探索するのに、開放系探索を目指すオープンイノベーションは極めて有効な手段といえる。とくに日本企業では、これまでケイレツを活用した既存の企業間取引や従来型の産学協同などでは、新たな価値を生み出すことが難しくなってきており、オープンイノベーションの有効性は高まっている。